見出し画像

記憶との邂逅、記憶の懐胎

アイドルグループ櫻坂46のメンバー土生瑞穂をご存じだろうか?
雑誌モデル、ショーモデルもしているグループ屈指の高身長美貌の持ち主なのだが、同時に超天然でもある。
彼女は、テレビで見る昔の映像から、社会全体がかつては白黒だったとずっと思い込んでいたらしい。
そこまで行くと異常値だが、昔と現在が分断しているように感じるのは誰しも同じなのではないだろうか。
僕自身、アンリ・カルティエ=ブレッソンやブラッサイ、キャパのモノクロ写真を愛してやまないが、その作品は時間の流れから切りとられ完結した世界だと思っている節がある。
なにより、日本人は食事を「目で食べる」とも言うくらいに色に敏感だから、色がないものとは知らず知らずに一線を画している気がする。
それだからこそ、モノクロ写真をカラー化する意義は大きいと言えるだろう。

ところで、僕がこの本を読んだのは、パラパラ見ているときにPREWARの章にある沖縄の写真を見つけたのがきっかけだった。
九州産業大学内の美術館で開催されていた「よみがえる沖縄1935」展でカラー化された写真を今年の7月にすでに目にしていたからだ。
この本で見た瞬間「ああっ」と思わず声が出た。
まさかまた目にするとは思わなかったし、美術館では聞こえなかった写真の中の雑踏の物音が聴こえた気がしたからだ。
これがモノクロ写真だったら、このような活き活きと音を感じることはなかっただろう。
そんな体験をしたから、巻末の「時を刻みはじめる」での高橋久さんのエピソードにはとても納得がいった。

この写真の時代を知らない僕らは、カラー化されたことで解凍された記憶と邂逅し、自らの記憶として懐胎し、自分ごととしながら媒介する。
この本はそのリレーのバトンの役目を果たすことになるに違いない。

さて、僕はこの本を読んでから、次回沖縄へ行った時は、那覇ウフマチのあった東町と屋嘉捕虜収容所跡を見に行こうと思っている。

カラー化されたこれらの写真は僕の中では庭田さんの言う「各地を訪れるきっかけ」にもうなっているのである。


#読書の秋2021
#AIとカラー化
#沖縄
#櫻坂46
#土生瑞穂

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?