あいつ

―ダンッ!
確実に仕留めたつもりだった。
苦虫を噛み潰した顔でそれを踏み潰したはずの靴底を確認するが死骸は何処にも無い。
それは目にも留まらない代わりに私の脛に止まっていた。
周りの客が飛び跳ねた私を一瞥した目は正にあいつを見た時のそれであった。
私は目にも留まらぬ速さで定食屋を後にした。

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