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精神障害者保健福祉手帳の申請について


今回の記事では、障害者者手帳の中でも精神疾患を有する方を対象とする「精神障害者保健福祉手帳」を持つメリットや申請方法等について解説してきます。

そもそも障害者手帳とは

障害者手帳は、視覚や聴覚に障害のある方、肢体不自由、心臓にペースメーカーを埋め込んでいる方などを対象とする【身体障害者手帳】、知的障害のある方を対象とする【療育手帳】、そして精神疾患のある方を対象とする【精神障害者保健福祉手帳】の3種類が存在します。
手帳を取得することで、障害の種別と等級に応じた様々なサービスを利用できるようになり、申請するメリットが大きい制度になります。
※療育手帳は法律ではなく事務次官通知に基づく制度である為、自治体ごとに名称が異なります。愛護手帳やみどりの手帳と呼称される自治体もあります。

具体的に利用できるサービスやメリットについて

障害者手帳を取得することで種類や等級に応じて以下のような利点を享受できるようになります。
実際に利用できるサービスは各機関によって異なる為、それぞれ詳細を確認する必要があります。

・所得税、住民税、相続税の障害者控除
・自動車税の割引
・障害者枠の雇用対象となる
・NHK受診料や携帯電話料金の減免
・障害者向けの駐車場の利用
・バスや電車、タクシー等の公共交通機関の割引
・映画館や美術館等の施設利用料の割引
※自治体ごとに手帳保有者に対して独自の手当や障害者医療費助成を設けている所もあります。

加えて、手帳を持つことで会社や学校で配慮を受けられるようになるなどの他にも様々なメリットがあります。

精神障害者保健福祉手帳の対象者について

精神障害者保健福祉手帳の場合は、統合失調症、躁うつ病、うつ病、摂食障害、発達障害、てんかん、高次脳機能障害、アルコールや薬物等の依存症、認知症、及びその他の精神疾患(知的障害を除く)を有し、精神障害のため長期にわたり日常生活又は社会生活に制限を受けている方が対象となります。
精神疾患の診断を受けているだけでは対象とならず、精神疾患の結果として生じた日常生活または社会生活(就労、対人交流、日常生活状況、障害福祉サービスの利用状況等)における制限の状態を総合的に勘案して手帳判定が行われます。
具体的に、精神障害者保健福祉手帳の精神障害等級の判定は、(1)精神疾患の存在の確認 (2)精神疾患(機能障害)の状態確認 (3)能力障害(活動制限)の状態確認 (4)精神障害の程度の総合判定というステップを経て行われます。
なお、発達障害の合併を伴わない知的障害のみの場合は、療育手帳の対象者となります。

手帳の等級について

精神障害者保健福祉手帳の等級は「障害等級判定基準」に基づき1級~3級の3段階の区分が存在します。障害の程度が重い方から順に1級、2級、3級と数字が増えるにつれて軽い程度の等級になります。

手帳の申請手続き

精神障害者保健福祉手帳を申請するのは、精神障害についての初診日から6ヶ月以上経過して以降になります。
申請時には、次の2つのうちいずれかの方法で、居住地の市町村担当課の窓口に必要書類を揃えて申請を行います。自立支援医療(精神通院医療)の申請と同時に手続きを行うこともできます。
各種書類による申請をした場合に、精神保健福祉センターにて判定が行われ、「精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準」に基づき対象に該当すると認定されれば、申請から約2ヵ月程度で手帳が交付されます。交付までの期間は同時期に申請した方の人数や判定機関の人員体制、等級判定の審査に要する時間等によって異なります。

必要書類等について

申請は「手帳用の診断書」または「障害年金証書等の写し」のどちらかで申請できます。必要な書類は市区町村によって異なる場合もある為、詳しい内容は居住地の自治体のHP等で確認する必要があります。
なお、精神障害者保健福祉手帳は取得していない状態であっても、精神障害で障害年金を受給している場合は、年金の等級に対応する手帳が交付される形になります。

診断書による申請の必要書類
(1)精神障害者保健福祉手帳申請書(※1)
(2)精神障害者保健福祉手帳用診断書(初診日から6か月以上経過した時点のもの)(※2)
(3)顔写真(縦4×横3センチ、申請の時から1年以内に撮影したもの)
(4)印鑑
(5)身分証明書
(6)個人番号が確認できる書類(※3)

障害年金証書による申請の必要書類
(1)申請書
(2)精神障害を事由とする年金証書等の写し
(3)顔写真(縦4×横3センチ)
(4)障害年金証書と年金振込通知書年または年金支払通知書などの写し
(5)年金情報照会同意書
(6)印鑑
(7)身分証明書
(8)個人番号が確認できる書類(※3)
※1.申請書は役所にあります。ホームページからダウンロードも可能です。
※2.精神障害者保健福祉手帳の作成については、精神科専門医、精神保健指定医などの精神疾患に対する十分な知識と経験を有する医師に原則記載を依頼する形になります。
「初診日から6ヶ月以上が経過した時点の診断書」である必要があります。
また、診断書作成にかかる料金は、医療機関ごとに異なります。
原則1か所の医療機関において、診断書を作成する形となりますが、別々の医療機関で精神疾患の治療を受けている場合などで1人の申請者から
複数の医療機関からの診断書を提出することが認められています。
*家族又は機関職員等が申請手続きを行うこともできます。
※3.個人番号(マイナンバー)制度の利用開始に伴い、申請書等に個人番号の記入が必要となりました。申請書等提出時には、申請者の「個人番号の確認(個人番号が正しいものであるかの確認)」及び「本人確認(個人番号の正しい持ち主であるかの確認)」を行うための書類の提示が必要となります。
【個人番号の確認ができる書類の例】
・個人番号カード ・通知カード ・個人番号が記載された住民票の写し、住民票記載事項証明書 など

精神障害者保健福祉手帳作成用の診断書について

診断書作成の為には、精神障害に係る初診日、並びに初診日から6か月を経過した日以後における診断書が必要になるので、医療機関を定期的に受診することが必要です。医療機関の通院頻度や、通院中断期間については、特段要件はありませんが、診断書作成に生活能力の状態を中心に詳細な情報収集が必要になりますので、定期的な診療を行い、診断書作成に必要な情報収集をすることが必須になると考えられます。

診断書の「初診年月日」についての補足
診断書で記載する初診日に関して、前医による治療経過がある場合には、前医の初診日を記載することになります。前医の初診日を確認することは困難な場合もありますが、こうした場合には、問診により聴取した日付を記載する形になります。
なお、初診日の記載が「診療録等で確認」したものか、「本人又は家族等の申し立て」によるものかの別についても明らかにすることが求められます。

有効期限

手帳の有効期限は2年間となる為、2年に一度更新が必要となります。
更新手続きは、有効期限の3か月前からできます。
*なお、等級変更が認められた場合は、等級決定日から2年間(当該月の月末まで)が有効期限となります。

最後に

障害者手帳を申請するかどうかは強制ではなく、あくまでも本人の自由意思や判断に基づく為、自身が手帳の対象に該当する状態にあるか、手帳を取得するメリットや有効な活用方法、また手帳を保有しているかを周囲に伝えるか否かなどを、全体的に考慮した上で申請を検討すると良いと思います。

参考:

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000617853.pdf


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