ひと夏の想い

『金賞 〇〇工業高校』
呼ばれなかった。自分の学校名が呼ばれなかった。
『続きまして銀賞 〇〇工業高校』

銀賞。1年間の想いはあっけなく銀賞に終わった。

遡ること1年前。
高校生ものづくりコンテスト電気工事部門に出場した。2年生で初出場。とても緊張した。それでも、過去最高の自分でもいい作品を作ることが出来た。
そして運命の結果発表。
『金賞 〇〇工業高校』
呼ばれなかった。そう、1年前も金賞を逃したのだ。
たった一つのピンの刺し忘れ。
その小さな小さなミスで確実に取れたはずの金賞を逃してしまった。
悔しくて悔しくて、何度も「あの時あのピンを刺してれば。ちゃんと確認してれば。」と後悔した。

そして時は経ち今年。
「今年は去年みたいな小さなミスをなくし、リベンジを果たします。」
そう宣言し、3月から練習に取り組んできた。
時間もいいペースで作れるようになり、精度もバッチリ。この調子だと金賞が取れると思っていた。

本番当日。恐れていた課題変更も対応できるもので「これはいける。」そう確信した。
しかし金属管施工がダメだった。水平にしないといけないのにナナメになってしまった。
終わった瞬間絶望した。
いつもは綺麗に加工できていたはずなのに、今日に限って上手く出来なかった。泣いた。
結果が出ていないのに泣いた。金賞逃したと思ったからではない。いや、それもある。それよりも大きかったのは、「自分の納得のいく、今までで1番美しい作品を作る。」という目標を達成できなかったからだ。

この2年間、高校生活をかけてひたむきに取り組んできた電気工事。
学んだものは多かった。
1年前何も知らなかった私に1から教えてくれた恩師の先生。
片付けや準備を手伝ってくれた友達。
練習を見に来て、「がんばれよ。」と言ってくれた先生。
みんなの期待があった。それに応えられなかった気がして本当に申し訳ないと思っている。

自分は詰めが甘いと認識した。
それでも、ものづくりコンテストに出場して「電気工事の道に進みたい。」と思うようになった。
「ものづくりってこんなに楽しいんだ。」とやりがいを感じることが出来た。
運動部に入ったことのない私がこんなに青春をかけて熱い思いを注ぐことが出来るなんて思ってもいなかった。

この2年間の全ての出会いに感謝します。
そしてこの経験を生かし、より技術を磨きたいと思います。

「工業人たる前に 良き人間たれ」

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