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「2022年アルバムベスト10」
ずっとやってみたかった2022年アルバムベスト10を選んだ。
先日、初めて「2022年映画ベスト10」を選んだので、音楽好きとしては、アルバムも選びたくなるのは自然の流れだったし、これもずっと選んでみたかった。
「映画ベスト10」との違いとして、映画ではランキングにして順位を付けたが、音楽では順位は付けず、10作品を選ぶだけにしようと思う。
わたしにとって音楽は、映画よりもっとに日常に近い存在で、聴くシチュエーションも無数にある。
通勤時に気分を上げたい時、仕事をしながら聴き流したい時、本を読む部屋のBGMとして流す時、レコードに針を落として大音量で聴きたい時、など、その時の気分やシチュエーションによって、選ぶ曲は変わってくる。
もちろん映画でも、その時の気分で観たい映画は違うが、“座って、集中して観る。”というシチュエーションは、どの映画にも共通していて、気分という意味においても、その映画を観ている時点で、その日の気分は、その映画を観たい気分に近いはずなので、体験として音楽より映画の方が比較がしやすいと感じている。
最近観た映画は一本だけど、今聴いているアルバムは何枚かある。好きなごはんのおかずは選べるけど、人生の最期に何を食べたいか選べないような感覚。
記載する順番は、アルバムのように、なんとなく続けて聴いていけるように並べた。
「順位をつけるのも違うし、洋楽と邦楽を分けるのも違うしなぁ〜。」と思っていたが、このルールにした途端に、選びたいアルバムも順番もすぐに決まった。
ジャンルも違うけど、もし読んでくれる人がいたら、貼り付ける埋め込み動画を流しながら読んでもらえると楽しいと思います。
#1:Samm Henshaw「Untidy Soul」
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英サウスロンドン出身サム・ヘンショウの1stアルバム。こんなジャケットデザインもう聴きたくなるに決まってる。
ソウルフルでパワフルなボーカルが魅力的で、ラップまで歌うシンガーなのに、ボーカルの録音が大き過ぎなくて良い。
ソウルで、ゴスペルで、ヒップホップで、全曲シングルかなってくらいキャッチーなのに、アルバムとしてまとまっている。
Arlo Parksもそうだけど、イギリスはポップに作られたソウルではなくて、ソウルに作られたポップスが多い気がする。
すぐ気分が上がるから出掛ける前とかに聴くと良いかも。
わたしは、料理を作る時によく聴いた。
#2:Reuben James「Tunnel Vision」
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英バーミンガム出身のルーベン・ジェイムズの2nd。
様々なミュージシャンとの共同名義の曲が並ぶが、アルバムとしてしっかりまとまっている。
ピアノがとても好きで、ジャズの即興性も感じていたが、若い頃はジャズピアニストとして注目を集めていたらしい。
メロウで、ジャズで、ソウルフル。あがる曲も、強めの曲もあるけど、どこか気品があって、コンセプトが通っている。
しっかりしたロックのようなベースに、メロウなメロディや、ジャジーな美しいピアノ、時にソウルフルな歌声やラップ。
嫌いな人なんて居るの?ってくらいに、聴きやすいのに、聴き応えたっぷり。
Tom Mischや宇多田ヒカルとの共同制作もしているらしい。
何を聴こうか決まらない時におすすめ。
#3:Leland Whitty「Anyhow」
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BADBADNOTGOODというカナダのインストルメンタルバンドのメンバーであるリーランド・ウィッテのソロ作。
まさにジャケットの世界観で、映画のサウンドトラックのように落ち着いた雰囲気でありながら、各パートのソロをしっかり聴かせる展開のある曲なので、音楽だけでもしっかり聴ける。
管楽器や弦楽器が多く使われているからか、音数は少ないのに、オーケストラのような音の広がりを感じるが、それでいてどこか曇っているような雰囲気がとても好き。
arauchi yuの「Sisei」を思い出した。
それよりもっと静かでヨーロッパの田舎の景色を連想する。
作業BGMや、音楽に向き合いたい時にもオススメ。
#4:Bobby Oroza「Get On The Otherside」
![](https://assets.st-note.com/img/1673663922053-mZJAhrIkig.jpg)
フィンランド人シンガー、ボビー・オロザの待望のセカンドアルバム。
音数が少ないのに、ひとつのまとまった楽曲になっていて、前作よりも完成度が高いと思う。
もちろん前作も好きだけど、音のバランスとか、ドラムの入れ方とか、時には他の音を聴かせるための演奏になっているように感じた。手数が多いけどうるさくないドラムがとても心地よい。
本作は、コロナの影響を受け、サラリーマンとして仕事をする日々を送りながら制作されたとの事。
力の抜けたボーカルと、最小限の音と楽器がそれを生かしているところが、坂本慎太郎のソロを彷彿とさせる。
今も聴きながら文章を書いていて心地が良いので、集中というより力の抜けた作業や、本・雑誌を読む時に良いかも。
#5:Bubble Tea and Cigarettes「There’s Nothing But Pleasure」
![](https://assets.st-note.com/img/1673664528086-OWdq1XajSQ.jpg)
NYを拠点に活動する韓国出身の男女デュオのファーストアルバム。
アルバムを流し、ワンフレーズ聴いただけで、すでに夢中になってしまい「早く次の曲を聴きたい」と思うアルバムに出会う事がある。
このアルバムがそれだった。
ドリーミーだけどサイケデリックで、スローなテンポと囁くような淡い歌声がたまらない。
Cigarettes After SexやBROTHER SUN SISTER MOONを連想するが、よりドリーミーで、よりサイケデリックなのに、もっとスローテンポなのが唯一無二だと思う。もちろん前者も好きだけど。
深い夜に、何度もリピートして聴いて、まだ眠りたくないと思ったまま、眠りたい。
#6:Kim Oki「Love Flower」
![](https://assets.st-note.com/img/1673665212467-CCFQgwdDY2.jpg?width=800)
韓国人のサックス奏者キム・オオキの最新アルバム。おそらく15枚目だと思われる。
この人の曲を昨年はじめて聴いたので、まだ最近のアルバムしか聴いていないが、ずっと聴いてる。
聴いてすぐに、サックスの音に惹かれた。
こんなに分厚くて重いサックスを聴いたのが久しぶりだった。
現代ジャズっぽいが、ピアノの音が生音で、彼の低くて厚いサックスとコントラストになっている。
アルバムで聴くともっと元気な曲もあり、聴きやすい上に全然飽きない。
最初は、謎のボーカルソングに「?」だったのだけど、聴いているうちに、その謎のボーカルソングも愛せてしまう。
サックス好きにも聴いて欲しいし、普段サックスを聴かない人にも聴いて欲しい。
是非、大きい音で、深くて分厚いサックスと向き合って聴くのがおすすめ。
#7:岡田拓郎「Betsu No Jikan」
![](https://assets.st-note.com/img/1673666042119-m5aQCR2CRZ.jpg)
2015年まで活動していたバンド〈森は生きている〉のメンバーだったギタリストのソロワーク3rdアルバム。
正直、〈森は生きている〉というバンドは、聴いたことがないのだが、彼のソロワークは好きで、出す度に毎回よく聴いていた。
今までの作品は、インディーポップな歌ものが多かったので、はじめて聴いた時は驚いた。
一度楽器を全て一新し、環境を変えましたってくらいに別の音になっていた。
今までの歌ものとは違い、歌もひとつの楽器として扱っているので、インストの曲と混ざっていても、アルバムとして統一感がある。
映画音楽のようだが、常に曲に展開があるので、じっくり聴いてしまう。構成も複雑で、自由に演奏しているライブのような空気も感じる。
彼は映画音楽なども手掛けているらしいが、この音楽では、しがらみのない自由な音楽で、やりたいことをやったのではないかと思う。
まさにタイトル「Betsu No Jikan」
日常とは別の時間が流れる気がするし、彼の今までの作品を聴く時とも別の時間だと思う。彼も作りながら、今までとは別の時間を過ごしていたのかもしれない。
作業BGMとしても捗るが、ヘッドフォンで聴くとまた新しい音が聴こえると思うので、ヘッドフォンやスピーカーなど色々な場所で向き合って聴きたい。
#8:山下達郎「SOFTLY」
![](https://assets.st-note.com/img/1673666506155-f5lP9QvHHW.jpg?width=800)
言わずと知れた日本のシンガーソングライター山下達郎の11年ぶりのオリジナルアルバム。
3年ほど前、まだ花粉症の人しかマスクをしていなかった頃、はじめて山下達郎のライブを観に行った。
「口にスピーカーを埋め込んでいるのでは?」と思う程に歌が上手で、音もリズムも、外れたと思った瞬間が無い程に上手かった。
高音でもしっかり声が通っていて、もしかしたら今までライブで聴いてきた歌手の中で、一番上手かも知れないと思った。
そのライブの時に、「機材が進化しているのに、自分は疎くて置いて行かれているから、来年からはライブを休んで、最新機材の勉強とレコーディングに専念しようと思う。」と言っていた。
山下達郎は、予告通り、その翌年から、毎年行っていたライブツアーを休止し、世間では自粛期間がはじまった。
自粛期間に、たまたまライブの活動を休止した達郎の11年ぶりのオリジナルアルバム。
「LOVE'S ON FIRE」を聴いた時に、胸が高鳴った。
トレンドを組んだエレクトロで、ダンサンブルな曲でありつつ、ギターソロもあり、しっかり歌声を聴かせるところは、あくまでいつもの山下達郎。
コロナ禍を超えて、クラブで踊ることを忘れつつある今だからこそ、この曲を聴いて胸が高鳴ったのかもしれない。
世界のトレンドを組んで、売れる為に作られたダンスチューンに、なぜ胸が高鳴らないのか、分かった気がした。
多くの層にウケる為にダンスチューンにするのではなく、今踊る為に、自分の曲で、ダンスチューンを作ったから、達郎の作家性が残っているのだろう。
達郎の曲であるからこそ、その後の既存の曲にも違和感なくつながる。
音が多いように感じるが、あくまで聴かせる音が決まっていて、音のバランスも良いから疲れない。
11年分の既存の曲から新曲まで、たくさん入っているベストアルバムみたいな構成なのに、これほどにまとまっているのが凄いし、どの曲もシングルみたいなのに、どの曲もちゃんと良いのが素晴らしい。
わたしは同じアルバムを繰り返し聴くのが好きなので、11年かかっても、通しで聴けるアルバムを作ってくれたところに加点ポイントが大きいのだと思うけど、選ばずには2022年とは言えなかった。
いいとこ集めたベストみたいなのに、ずっと聴けるから、ドライブで聴くのにも良さそう。
#9:グソクムズ「グソクムズカン」
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吉祥寺を中心に活動するロックバンドの1st未発表集。
正直、コンセプトアルバムとしては、1stアルバムの方が好きなのだけど、発売日が2021年12月15日だった。でも2022年に何度もリピートして聴いたし、こちらの未発表集は、2022年発売なので、それもひっくるめて選んだ。
ギターロックでありながら、どこかフォーク。
はっぴいえんどを感じさせる言葉運びと歌詞もあって、懐かしいけど、軽快な爽やかさもあり、新鮮でもある。
どこかでシティフォークと言われているのを見た。なるほど。
このアルバムは、1stアルバム「グソクムズ」よりも、もっと軽やかで、音もパキッとしてる。昨年のうちに、さらに軽快さが増した2ndアルバムも出しているが、まだあまり聴いていないので、ここでは1stと未発表音源をおすすめ。
Pictured ResortがUK寄りのジャパニーズネオシティポップだとしたら、グソクムズはフォークや日本のロックを現代にアップデートしたネオシティフォーク。
休日の朝に、洗濯物を干した後に、コーヒーを淹れながら聴きたい。
#10:サニーデイ・サービス「DOKI DOKI」
![](https://assets.st-note.com/img/1673666636889-TTT5wcspVE.jpg?width=800)
日本のスリーピースバンドの14thアルバム。
先に言っておくが、わたしはサニーデイ・サービスが大好きなので、思い入れもあるかもしれないし、文章も長くなりがちかもしれません。
新しいドラマーが加わり、彼ありきで曲を作ったら、自然とこういう曲になっていったらしい。
前作の「いいね!」はロックバンドに焦がれた10代の青い衝動のようだったが、今作は20代半ばくらいの若者の情熱のようだと思った。
10代の頃の「とにかくやってやる。」という衝動ではなく、20代になり、社会における自分の能力や可能性もなんとなく分かってはいるが、まだ若さは忘れたくないという、10代の頃のそれとは少し違う、もう一つの青春の情熱。
特に「風船賛歌」という一曲目の曲に「青春狂走曲」のような力を感じている。
「そっちはどうだい?うまくやってるかい?」
青春狂走曲を聴くと、昔の自分に問いかけるようにも聞こえるし、この曲を聴いていた頃の自分に言われているような気分にもなる。時間を超えて訴えかけてくるような不思議な歌詞だ。
一曲目の風船賛歌は、イントロなしで最初ならサビを歌う。最初から全ての音が揃っていて異質だけど、歌い出しからこの歌詞なのが良い。
「あなたのそばに行き 歌をうたってあげたいな」
最初は、コロナ禍でしばらく会えていない遠くの誰かに歌っているように聞こえる。しかし、サビが終わって、次のメロディがはじまると、時間が広がる。
「今の君はなんだか 歳をとってしまったみたい」
ここから急に、昔の自分に問われているようにも感じる。
「青春狂走曲」 のように、10代の頃の自分に初期の衝動を忘れるなと言われているような気にもなるし、10年後の自分自身にうたっている気にもなる。
風船賛歌のPVが過去の曽我部恵一バンドの頃の「天使」という曲をモチーフにしていたが、この曲のPVで時間軸を超えたモチーフを用いている意味も分かる気がする。
曲によって彷彿とさせる音楽も異なる。
rocketshipみたいなギターポップな曲もあれば、ピクシーズみたいなオルタナ曲もあるし、いつものサニーデイみたいなやさしい曲もある。
「昔くれたミックステープ ピストルズとかも入ってて ビートルズとかも入ってて」
海辺のレストランという曲にも出てくるように、10代の頃によく聴いたロックバンドを引っ張り出して来て集めたベストアルバムみたいだ。
自分でも、なぜ大好きなのかが不思議なくらいに、とてもキャッチーで明るいので、元気がない時に聴くのがおすすめ。
イヤホンで帰り道に聴きたい。高校生の頃みたいに。
以上、わたしの「2022年アルバムベスト10」でした。
新作を劇場で観る映画と違って、音楽は新作であってもすぐにサブスクで聴けてしまう為、今年の作品である事実をあまり気にしない事が多いので、新作であると意識せずに洩れてしまっている作品や、忘れてしまっている作品もあるかもしれない。
いろんな人のベストアルバムも見てみたい。
皆さまのおすすめも是非、教えて下さい。
noteでは、映画のことに限らず、音楽やアート・料理・建築など自分が日常で考えた事を忘備録として残していこうと思うので、もしここまで読んでくれた方がいたら、是非にコメントやフォローしていただけると嬉しいです。
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