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箱庭case.2.

 ここに来てからどれぐらい経ったのだろうか。前後上下左右白い正方形に囲まれたこの部屋に、気がついたら立っていた。出入り口は見当たらず、携帯も電源がつかない。だが不思議なことに空腹になることも眠くなることもない。
 部屋の中央に箱がある。両手で抱えるほどの大きさの白い箱だ。どうしようか。開けてみようか。中に爆弾でもあるのか。ここから出る方法でもあるのか。出る方法なんてあるのか。夢でも見てるのだろうか。部屋を見回す。白に取り囲まれる。白に取り込まれる。なぜかは分からないがあぶら汗が止まらない。


よし、開けるか。


 箱の蓋を外す。
中には小さな自分がいた。同じように部屋の中央で箱を開けているように見える。それが本当に自分なのか、確認するために手を挙げた。箱の中の自分も手を挙げるのを確認した。目を擦った。腕をつねった。頬を叩いた。しかしそれは、自分と同時に自分として存在していた。
 もっと早く気づくべきだったのかもしれない。前後上下左右白い正方形に囲まれたこの部屋。この箱の中も白かった。

自分もまた、自分を覗いているのだ。

今覗いている「箱の中の自分」もその部屋の箱の中にいる「箱の中の自分」を覗いていて、自分もまた「箱の中の自分」として「自分」に覗かれているのだ。




気でも狂ったのか。




箱庭case.2 重箱

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