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【短編小説】ハプバーの熱い夜

ある蒸し暑い夜のこと、二度目のデート?を約束した5歳年上の男と錦糸町で待ち合わせ

初めて会った時に、ハプバーに行ってみたい、としきりに話していた男だ

ま、多分だけど

カップルで入店して

そこに来てる若くてカワイイお姉ちゃんとイチャコラしたい、という腹だったのであろう

まあまあのイケメンで

食事の時の振る舞いも、そこそこ堂々としていたし

私も 未体験のハプバーなるものにエスコートしてもらうには丁度いいかな、と納得して

レッツゴー♪

最寄り駅から電話して、店主に誘導されながら辿り着いた一軒家風の建物

表の監視カメラに顔を向けて

しばし待つ

スーッと開いた扉の奥は

仄暗い廊下

隠微なムードが漂っている

カフェのギャルソンを気取った男が現れ、店内の構造やルールなどを手短に説明してくれた

ここは

見学だけの場合でも

とりあえず、シャワーを浴びて

ガウンに着替えるシステムのようだ

黙々と指示に従う我々…

ややあって

安普請のバーカウンターが奥に見えるラウンジ風の大広間へ移動

ガウンに着替えた我々の他に

若いカップルと中年カップルが一組ずつと単独男性2名

それに

ものすごく美しい単独女性がひとり

男五人 女四人が今夜のスタメンらしい

男たちは皆、麗しい単独女性をチラチラと見ている

私以外の女達はちょっとイラっとしていた

空気を読むのは得意な私!

そして、根っからの仕切りたガール←ガール?

重苦しい雰囲気を

布団をはねのけるかのように

沈黙を破った

誰もが不幸にならない最善の策を打つために

拳を握りしめてスッと立ち上がり

努めて静かに提案を始めた

「男性の中で、こちらの美しい女性と交わりたい人、いらっしゃいますか?」

おばちゃんからのいきなりの質問にアタフタしながらも

男性陣、全員の手が上がる

「では、まず、あみだくじでその順番を決めましょう!

そして、待ち時間の間に

こちらの二人の女性を誠心誠意の前戯で気持ちよくさせてあげてください

女性ひとりに対して男性ふたりで取り組めば、かなりいい結果が期待されると思います

皆様、ご賛同頂けますでしょうか?」

割れんばかりの拍手がラウンジに響いた

ギャルソンが事の成り行きを眺めながら、あみだくじが書けるようなボードを持って来た

「お客様、本当に助かります。こんなに盛り上げて頂けるとは…」コソコソと私の耳元で囁く

「いえいえ、お役に立てて光栄です。好きなんですよ、人さまの喜ぶ顔を見るのが」

安普請のバーカウンターの

スツールに浅く腰掛けると

力が抜けるのがわかった

いくら肝の座ったおばちゃんでも

スッポンポンにガウン一枚で

初めて会った人たちの前で話したのは

自覚はないものの

かなりのストレスを伴っていたようだ

大広間の中心では

あみだくじの当たりを巡り

キャーキャーと楽しそうに騒ぐ声が聞こえる

「ちょっと横にならせてもろてもええかな?」←思わずの関西弁

ギャルソンに断りを入れて

奥のベッドで休ませてもらった

心地よい眠りについた

今夜もいい仕事、したかな

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