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【イベントレポート】第 25 回釜山国際映画祭「アジア映画の窓」部門で上映! 外山文治監督 日本からのリモートティーチインに登場! “いつか夜明けは来る!”希望を込めた自信作『ソワレ』がついに世界進出!!

◾️日程:10月28日(水)「ソワレ」16:30〜上映&上映後Q&A(18:21〜約30分間)
◾️開催場所:「映画の殿堂」(別名:釜山シネマセンター/韓国・釜山)
◾️ゲスト:外山文治監督
◾️選出部門:第25回釜山国際映画祭「アジア映画の窓」正式出品

本年度の「アジア映画の窓」部門に正式出品された映画『ソワレ』が、第25回釜山国際映画祭で上映されました!

世界的な新型コロナウィルスの感染拡大を受け、外山文治監督は現地入りを果たせまえせんでしたが、上映後に釜山の会場と中継を繋ぎ、東京都内からリモート形式でのQ&Aに参加しました。

会場では観客のみが参加可能なウェブ・プラットフォーム上でメッセージが募集され、それを主催者側が選択し監督へ質問が投げかけられる方式がとられました。

釜山国際映画祭_Zoom_スクリーンショット

コロナ対策により人数制限がありながらも、上映会のチケットは完売!貴重なチケットを手にしたおよそ50名の観客から温かい拍手に出迎えられた外山監督は、「アンニョンハセヨ」と韓国語で挨拶し、海外では初お披露目となる本作の同映画祭での正式出品と上映の喜びを改めて言葉にしました。

役者を目指して上京するも芽が出ず、オレオレ詐欺の片棒を担ぎながら日銭を稼ぐ翔太(村上虹郎)が、故郷・和歌山の高齢者施設で働く女性タカラ(芋生悠)と、ある事件をきっかけに先の見えない逃避行を始める物語。まずは、そんなストーリーをオリジナル脚本として書き始めた出発点について問われると、外山監督は、「閉塞感が漂う世の中で、人々が希望の入り口に立つまでの物語を届けたいという思いがありました。」と思いを吐露。この言葉を皮切りに、観客から次々に物語の真髄に迫る質問が飛び出しました。

最も多く質問が上がったのが、タイトルについて。韓国語では「夕暮れ」と翻訳された『ソワレ』ですが、非常に悩み抜いて翻訳されたといいます。これを聞いた監督は「演劇の用語では“夜公演”という意味も持つ『ソワレ』ですが、同時に“夜明け前”という意味も持っています。この物語の主人公たちは、人生の主人公になれない暮らしを送ってきた若者ですが、彼らが“自分たちの人生”をスタートさせるように、今まさにどこかで明るい“夜明け”を待っている人たちへのメッセージを込めて、『ソワレ』と名付けました。」と思い入れを語りました。

また、父親からの激しい暴力により大きな心の傷を負ったタカラが、たびたび幻を見るシーンについても多くの質問が飛び交い、特に「妊娠」を想起させるシーンについての意図について問われると、「色々な受け止め方があると思います。ただ、私は“人間は生き直すことができる”ということを訴えたかった。タカラはもう一度、自分の人生を再生しようとしていると伝えたかったんです。」と演出の狙いを明かしました。

続いて、翔太を演じた村上虹郎を、韓国でも親しみのある人気の俳優として紹介した上で、タカラ役を演じた芋生悠を「とても神秘的な存在として印象づいた」と評し、その起用理由について質問が及びます。

外山監督は「村上さんは以前から共演歴があり、プロデューサー含めて満場一致でオファーしましたが、芋生さんはオーディションで選びました。彼女の存在感は日本でも驚きを持って受け入れられています。本作がきっかけで、多くの方の記憶に残ったと思いますし、この先さらに大きく飛躍していくと思います」と若き新星に賛辞を送りました。

さらに、犯罪者として追われる身となった翔太とタカラに対する、監督の温かな眼差しを感じたという観客からの問いには、「犯罪を犯す人間を記号的に扱わず、一人の人間として描きたいと思っていました。翔太とタカラが特別なわけではなく、誰もがこの二人のような状況に追い込まれる可能性があるのではと思っています。彼らをシンプルに非難するのか、自分を重ね合わせてみるのか。それは人それぞれです。ただ、いずれにせよ、いつまでも観客の心に残るキャラクターにしたかったんです」と応じました。

続いて、劇中に海や水の描写がたくさん出てくるがそれはなぜか?という観客からの問いに「面白い質問ですね」と笑みが生まれた監督。「意識はしていませんでしたが、逃避行を続けるなかで翔太とタカラの心が浄化されていく様を描きたいと思っていたので、和歌山の美しい風景を前にカメラが自然に向いていったのだと思います。」とオールロケで挑んだ撮影の日々を回顧しました。

最後に次回作についての質問が飛ぶと、「オリジナル脚本で映画を撮ることが難しい日本でありながら、幸いなことに、初の長編映画も2作目の本作もオリジナル脚本で作ることができました。まだ何をつくるか決めてはいないですが、これからも自分の内側から涌き出るアイデアや想いをもとに、映画を撮っていきたいと思っています。」と思いを明かした外山監督。「次回作ではぜひ直接お会いしましょう!」という司会の言葉に続けて、観客からも大きな拍手が送られ、Q&Aは大盛況のうちに幕を閉じました。

外山監督_soiree_busan

新型コロナウィルスの感染拡大を受け、映画祭の開催自体が危ぶまれるなか実現したリモートQ&A。『ソワレ』に込めた「いつか夜明けはくる」という外山監督の切なる願いは、海を越えて確実に人々の心に届いたようです。

なお、本作を劇場でご覧いただけなかった方々のために、2020年内には日本国内でのオンライン上映も決定しました!

さらに広がりを見せる映画『ソワレ』に引き続き、ご注目ください!

<第25回釜山国際映画祭>
開催日程:2020年10月21日~30日(釜山・現地時間)
映画の復興と芸術への理解を深めることを目的に1996年に創設。以後、急速に規模を拡大しアジア最大級の国際映画祭へと成長を遂げ、本年度は30日までに68カ国・地域の192作品が上映されている。

「アジア映画の窓」部門は、様々な視点やスタイルを持つ、アジアが誇る才能豊かな映画監督たちの優れた作品を紹介することを目的とした部門。昨年には、瀬々敬久監督の映画『楽園』や俳優のオダギリ ジョーが監督を努め、村上虹郎も出演する映画『ある船頭の話』、周防正行監督の映画『カツベン!』などが出品されており、骨太な日本映画が多くピックアップされてきた。