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組織崩壊を起こしている古巣への哀歌

これまで経験した組織崩壊について抽象化し、極めてフィクションに近しい形で振り返る。


組織はいかにして崩壊したか

採用を増やそう

数年前、過去最高益を記録した古巣は絶好調だった。
現場にかかる負担と嵩んでいくサービス残業を見て見ぬふりをしつつの到達点だ。
さすがに反省があったのか、人員を大幅に増やすことにした。

利益を原資に経験豊富な中途社員……ではなく、新卒の社員やジュニアクラスの中途社員をかき集めた。
採用単価が安いからだ。
少ない投資で大量の社員を集めることに成功した。

マネージャーを増やそう

組織の人数が増え、トップが一人でマネジネントをすることが難しくなってきた。
チームを作り、マネージャーを置かねばならない。

とはいえ、ジュニアクラスの中途メンバーが多い組織体にマネージャー経験者がいるはずはなかった。
これまでの実績や実務経験に関係なく、人当たりの良い人物をマネージャーに据えることにした。

「仕事の進め方がわからなくても、部下の指導や教育方法を知らなくても、人間力があれば大丈夫!」というわけだ。
みんなが協力し合えば、きっと目標達成できる。
実に美しい思想である。

床面積を増やそう

人数が急激に増えたため、オフィスには人があふれかえっていた。
広い事務所に引っ越さねばなるまい。

どうせ引っ越すなら利便性の良い場所で、最近の流行りを取り入れたインテリアで、取引先を接待できるスペースも作って……。
夢と家賃と床面積はどんどん膨らんだ。

まとめ

  1. 猫の手も借りたいからといって本当に猫ちゃんを連れてくるな

  2. マネージャーを人当たりだけで選ぶな

  3. やみくもに固定費を増やすな

売上や利益をモニタリングする仕組みや、既存顧客との契約を続けるための工夫なども一切なかったので、焼畑農業的に新規顧客開拓を続けるしかない状況が続いていた。
誰かが大逆転を起こすしか起死回生の策はない。
これは経営ではなくギャンブルだったのだ。

経営を必要としていない企業に経営を持ち込もうとすることは非常に不毛である。
決して火中の栗を拾おうとしてはならない。
疎まれこそすれ、感謝される日は永遠に来ないだろう。

後書き

古巣のメンバーから立て続けに連絡があった。
全員が口を揃えて、転職すべきかどうか相談に乗ってほしいと言う。

とはいえ、辞めた人間ができることは少ない。
退職者に相談を持ちかける現役社員が期待しているのは「なぜ自分は辞職を決意したか?」をくまなく語ることである。
彼らはそれを聞いて背中を押されたいのだ。

組織崩壊は起こらない方がいいに決まっている。
組織に関わる人間が全員不幸になる。

では、組織崩壊を防ぐためにどの時点で何をすべきだったのか?
この点は別の機会に考察したい。

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