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おそばマスクは石ノ森ヒーロー

何言ってんだ、って感じのタイトルになってしまったけれど、この気持ちを共有できる人が身近にいないので文に認めさせていただく。


おそばマスクとは、国民的漫画「ONE PIECE」に出てくるヒーロー(?)である。

以下、おそばマスク含む比較的最近のワンピネタに触れるので、万一このnoteを読んでいる人でネタバレを気にする人がいたらここで読むのをやめて欲しい。とはいえこのnoteを書いてる本人は単行本派であり本誌はそこまで一生懸命追ってないので、単行本になってる範囲の話くらいまでしかしない(できない)つもりだが。


おそばマスクの誕生まで

「おそばマスク」、またの名を「ステルスブラック」について。

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ちなみに「ステルスブラック」と呼ぶと変身者が嫌がるので、以降この記事内では「おそばマスク」と呼称させていただく。おれは正当な読者なのでヒーローの嫌がることはしない。

のっけからいきなり彼の正体に言及してしまうが、おそばマスクは麦わらの一味のコック、サンジである。

蹴り技が得意のコックが何故変身するようになったのかという話については、現行のワノ国編の一つ前、ホールケーキアイランド編まで話を遡る必要がある。

ホールケーキアイランド編では、長らく謎だった(というか個人的には気にも留めていなかった)サンジの出自が明らかになった。

サンジが北の海ノースブルー出身、という設定は空島編あたりで触れられていた気はするが、彼は北の海ノースブルーのとある王族の生まれだった。その名をヴィンスモーク家と言い、ヴィンスモーク家が支配している王国をジェルマ王国と言う。

ジェルマ王国は軍事国家でもある。王族のヴィンスモーク家を含む国民のほとんどが「ジェルマ66ダブルシックス」という国軍(科学戦闘部隊)に属しており、彼らは別名「戦争屋」とも呼ばれる。どうも世界中の戦争に介入し、金銭と引き換えに軍事的支援を行っているようである。

ジェルマは科学力に優れた国でもあり、クローン兵や改造人間を生み出したり強力な装備や兵器を作り出したりもしているらしい。そして戦争の現場に兵士を派遣したり、武器も輸出したり?しているようだ。

つまり、やってることはほぼ「黒い幽霊団ブラックゴースト」や「ショッカー」である。ジェルマ自体が目指しているのはあくまで北の海の支配であり、世界征服を目的にしているわけではないが。

そしてなんと、実はサンジも改造人間になるはずだったことが明かされた。ここで言うジェルマの改造人間とは、サイボーグのように体に機械を埋め込む形ではなく、遺伝子的なもの(作中では血統因子と呼ばれる)を弄って生まれながらにして超人を作るという形である。

サンジは結果的にその「改造」が失敗し、普通の人間として生まれてきたが、サンジのほかの兄弟たちはみな改造された形で生まれてきた。ていうかサンジお前兄弟いたんかい。

サンジを除く兄弟たちは、改造の結果、子どもの頃から大人をしのぐ筋力、外骨格と呼ばれる銃弾をはじき返すほどの頑強な皮膚、悪魔の実でも食ったのかと言いたくなる超能力の数々などを得た。
一方、戦うために不必要な一部感情(優しさ、思いやり、哀しみetc.)は削ぎ落された。生まれながらにして兵士であり兵器でもある。

改造が”失敗”し普通の人間として生まれたサンジは、親兄弟たちからとことん虐められた。挙句の果てに死んだことにされ(葬式まで挙げられた)、地下に幽閉され、やっとのことで自国を抜け出したサンジは、紆余曲折の果てに現在麦わらの一味の戦うコックさんとして日々を過ごしているわけである。この辺りはいちいち説明しても長くなるので省略する。

そんなサンジが何故変身できるようになったのかという話だが、そもそも「変身」の技術自体はジェルマのものである。

サンジの兄弟たちは皆、「レイド缶」というアイテムによって「レイドスーツ」を着用することにより大幅な戦闘力の上昇を得る。すなわちこれが「変身」にあたる。

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ホールケーキアイランド編にて諸々の理由があって一時的に実家(ヴィンスモーク家)に戻ったサンジは、ホールケーキアイランドを去る際に兄の一人にレイド缶を持たされた(というか押し付けられたというか知らん間に持たされていた)。

ワノ国にて、最初はジェルマの技術であるレイド缶の使用を渋っていたサンジだが、これを使って変身することで仲間を守れるのなら、という理由でついに変身を決意する――という流れでサンジの変身に至るわけだ。


石ノ森テイスト

このサンジおよびおそばマスクの誕生に至るまでの流れ。
もう誰しもが思ったと個人的には考えているのだが、完全に石ノ森ヒーローのそれである。

一口に石ノ森ヒーローと言っても、実際は結構色んなパターンがあるが、具体的に言うとサイボーグ009や仮面ライダーだ。

サイボーグ009は、死の商人「黒い幽霊団ブラックゴースト」に人間兵器として改造され身体のほとんどを機械化されてしまった主人公・島村ジョーが、彼を含むサイボーグ戦士9人+博士1人で反旗を翻し、黒い幽霊団ブラックゴーストと戦うという話である。

仮面ライダー(初代)は、世界征服をたくらむ「ショッカー」により人間兵器(バッタ怪人)として改造され、009と同じく身体のほとんどを機械化されてしまった主人公・本郷猛が、しかし脳改造手術(=洗脳)を受ける前に緑川博士に助けられ、以後ショッカーを壊滅させるために戦うという話だ。

両作品、そしておそばマスクに共通する特徴として、「悪から生まれた正義」というものがある。

009も仮面ライダーも、悪に立ち向かうための力を手に入れた場所は敵組織だ。009は黒い幽霊団ブラックゴーストに、仮面ライダーはショッカーに改造手術を受けた。それまではあくまで普通の人間だった。

おそばマスクもそうだ。ジェルマはサンジの実家とはいえ、やってることは完全に悪の組織であるし、サンジ自身もそんな実家を毛嫌いしている。そんなジェルマにもたらされた技術によるパワーアップ。
この過程、連載当時は「結局あんなに嫌ってたジェルマのレイドスーツで強化されるのかよ」等の文句も散見された気はしたが、個人的にはこの展開、「石ノ森!!!!!!!」と思ってめちゃくちゃ興奮した。

ジェルマという悪から生まれたサンジは、”失敗作”であったために洗脳はされず、人間らしい優しさをもってジェルマから逃げ出し、ジェルマの力で変身する―――これで敵がジェルマだったらもう完全に仮面ライダー。

残念ながらと言うか、サンジおよびルフィたち麦わらの一味の敵はジェルマではない。敵どころか、「度を越えて優しい」サンジは、別の敵に陥れられたジェルマをそれでも命だけは救いたいと願っていた。結局ジェルマ及びヴィンスモーク家がどうなったのかは、作中ではまだ描かれていない。


それと、これは少し別の話だが、ホールケーキアイランド編では、ヴィンスモーク兄弟たちの中でサンジ(と一部姉のレイジュ)だけが正常な”人間の感情”を得たことで、それゆえに苦悩するシーンがいくつか見られた。

そういう辺りも、良心回路ジェミニィと言う名の「善の心」を与えられ、ロボットの身ながら善悪のはざまに揺れ苦しむ「人造人間キカイダー」みたいだな、と少し思った。

「人造人間キカイダー」では、物語のラストにて「ピノキオ(=人の心を得た人工物 ≒ キカイダー)は人間になってほんとうに幸せになれたのだろうか…?」と読者に問いかける形でENDとなっている。サンジは人として生まれて、なんやかんやあったとはいえ今のところは幸せそうだが、果たして。


石ノ森ビジュアル

あとおそばマスクの見た目も、完全に石ノ森ヒーローを意識しているデザインで個人的には結構好きだ。これはおそばマスクというかジェルマ全体に言えることだが。

丸みを帯びた手足先、デカいボタンのような装飾、首に巻かれたスカーフ、デカいベルト、やたら逆立っている髪型etc etc...

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サンジの兄弟たちもこの有様。サンジ入れて5人姉弟で戦隊モノっぽいのもベタだが良い。まあ突然ワンピース世界にこんなゴレンジャーみたいなヤツらが登場した時は度肝を抜いたが、尾田先生が楽しそうなので良いだろう。カッコいいし。

おそばマスクに至ってはもう髪型が完全に009じゃねェかコレ。

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サンジの片目が隠れているビジュアルがそのまま009になるとは思っていなかった。

おそばマスクはカラーリングも良い。裏地が赤の黒マントに白いグローブとブーツ。死神博士もしくはスカール様か?

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ただ、本編中にてジェルマ丸出しなデザインが気に食わないのであろうサンジが、レイドスーツのデザインの変更を希望する旨の発言をしているため、今後の再登場の際はもっとヒーロー寄りのデザインになっているのかもしれない。



先日、アニメの方でもおそばマスクが満を持して登場したので視聴させていただいたが、スピード感ある動きと演出で大変カッコよかった。レイドスーツには加速装置までついているというのだからもう動きが009。

もともとサンジ自身が蹴り技主体のキャラなので、必殺技(?)も「流星おそばキック」という、高高度からの跳び蹴りだった。ライダーキックじゃん!と思いつつネーミングは恐らく、帰ってきたウルトラマンの「流星キック」が元ネタだろう。どちらも要は飛び蹴りなのでほぼ同じものだが。


そんなわけで、石ノ森ヒーローへと変身するようになったおそばマスクの活躍、今後も注目していきたい。


(おわり)

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