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おかあさんのところにやってきた猫/角田光代(100万分の1回のねこ より)

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『ひとりの女はひとりの赤ん坊を抱き上げて、わたしのところにきてくれてありがとう、と笑う。間違えずに、わたしのところにたどり着いてくれて。 』

あらすじ: 佐野洋子さん著の絵本、『100万回生きたねこ』への、13人の作家によるオマージュ作品集。
『おかあさんのところにやってきた猫』は、人間のおかあさんが引きとった猫の視点からのお話。
おかあさんはわたしを何でも褒めてくれる。
イタズラさえ褒めてくれる。
私を可愛い子猫だ、と抱きしめてくれる。
でも、おかあさんが与えてくれる何の不自由もない生活ができる、可愛い子猫のわたしではなくて、ちゃんとわたし自身でわたしを生きたくなった私は、家を出る決心をする。
もう二度と戻らないつもりで。
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もともと原作の絵本、100万回生きたねこが好きで、子どもの頃からそれだけは読んでたから、そのオマージュ集ってことで読んでみた本。
子猫の私とおかあさんと、子猫を連れ出したトラ猫のすれ違う愛情のやりとりが切なくなった。
この子猫はトラ猫にもおかあさんにも愛されてたし、子猫自身も大切に思ってたけど愛するまではいかなくて、結局誰とも愛し合うことはできなかったのかな。
ずっと求めてた自由は手に入ったけど、誰かをしっかり愛せなかったから、この世に未練を残すことになるのかも。
もし、トラ猫なりおかあさんなり、誰かをしっかり愛せてたら、死ぬ間際にまた違うことを考えたりしたのかな?
このお話が一番100万回生きたねこに雰囲気が似ていて良いなと思いました😌