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バブーシュカ/吉本ばなな

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『心配かけたり、急にやってきたり、ふたりそろって憎たらしくて、しかもその百倍くらい愛おしかった。』

あらすじ:ある寒い冬の日、「私」は風邪をひき喉を痛めて声が出なくなってしまった。
雪が降り出して外の世界が静まり返っていくのを黙って見ながら、一緒に住んでいる彼のことを思う。
たった一人の肉親だった母を失った彼は深い悲しみの底にいた。
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吉本ばななさんで1番か2番に好きなこの話。
私が彼を心配に思うあまり、元気づけたくてしてきた言葉や行動が、どれだけ余計なもので相手の心を傷付けていたか。
でもこれってすごく難しいなと思う。
彼を心から大切に思えば思うほど、なにか力になりたい、できることをしてあげたいって考えてしまう。
相手を守りたい、大切にしたいって思ったときに一番良いのは言葉じゃなくて、こういう静かで暖かい時間なのかなって思った。
その静けさの中に相手を思う気持ちが含まれていれば、言葉にできない優しさに癒されるのかも。
私が静かに彼を思いやる気持ちが雪が静かに降る景色と重なっていて、読みながらしんみりする。
できれば冬の寒い日に、一人静かに読みたい作品 。
読み終わったあともしばらく余韻が残る。