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ラン/森絵都

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『 この冥界へ正式に迎え入れられるまで、私はあとどれくらいこんな身を裂くような、心が飛び散るような別れを経なければならないのだろう。溶かすことも忘れることも許されない生者たちの世で、どれくらいの出会いと別れに翻弄されるのだろう。』

あらすじ: 9年前、家族を事故で失った環。
その後育ててくれた叔母も亡くしてしまい、大学を中退して孤独な日々を送っていた。
その後、引っ越し先で親しくなった紺野さんにもらった自転車に導かれ、異世界に紛れ込んでしまう。
そこには亡くなったはずの一家が暮らしていた。
やがて事情により自転車を手放すことになった環は、家族に会いたい一心で40kmを自分の脚で走る必要に迫られる。
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前半は話に引き込まれながら読めて、後半でぼろぼろ泣いた。
ちょっと分厚い本だけど文章自体は読みやすい!
生と死がテーマなのに、ファンタジー要素もありつつたまにコミカルな展開もあるから重すぎないで一気に読めて、読み終わったあとは爽やかな気持ちになれる。
全体を通しての、「生き続ける」という力強いメッセージ。
不幸合戦や幸福自慢をしたって心は満たされない。
大切な人を亡くしたとしても生きている限りは不幸に甘えず、辛くても幸せや生きる意味を自分の意思で生産していかなくちゃいけない。
生きている人にはそれをやれる力があるんだよね。

そして、死んでしまった人にはもう会えない、じゃなくて、自分が生きているからこそ別れなければならないのが切なすぎた。