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大好評『タロットの美術史』シリーズより、「巻末特別寄稿」の一部を特別公開!|6巻

大好評『タロットの美術史』シリーズより、
「巻末特別寄稿」(2巻~12巻に収載)の一部を特別公開!
超豪華ゲスト陣による本書でしか読めない
タロットにまつわるエッセイです。

6巻 運命の輪・力

■6巻 運命の輪・力

寄稿者:伊藤博明

(宗教象徴学/専修大学文学部教授)

◆T・S・エリオットとウェイト゠スミス版タロット◆

 1922年の12月、「4月はもっとも残酷な月……」で始まる、20世紀モダニズム詩の金字塔、T・S・エリオットの『荒地』がロンドンで刊行された。「I 死者の埋葬」の43行目以下では次のように歌われている。

ソソストリス夫人は有名な占い師でひどい風邪をひいていたが、
それでもやはり
ヨーロッパ随一の賢い女と
知られていて
突飛な一組のカードを手にしていた。
ほら、と彼女は言った。
これがあなたのカード、
水死したフェニキアの船乗りよ。

 占い師が手にする「突飛な一組のカード」とは、タロット・カードのことである。ソソストリス夫人は、依頼者に次々とカードを指し示す。ベラドンナ(岩窟の女、急場の女)、三本の棒を伴う男、〈車輪〉、片目の商人、何も書いていないカード、そして見つからない〈首吊り男〉、輪になって歩く一群の人々。
 エリオットは自註において、「私はタロット・カードの正確な構成についてよくは知らないが、それから明らかに逸脱して、自分の都合のいいように利用している」と述べている。実際に、現行の大アルカナに属するものは、〈車輪〉(運命の輪)と〈首吊り男〉(吊られた男)だけである。
 それでは、エリオットはどこからタロットの知識を得たのだろうか。…………

【この続きはぜひ本書で!】