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すべてのひとに庭がひつよう|石躍凌摩

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庭師としての日々の実践と思索の只中から、この世界とそこで生きる人間への新しい視点を切り開いていくエッセイ。
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#矢野智徳

【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第8回|場踊り|石躍凌摩

*** 第8回場踊り  日暮れも随分と早くなったものだと、すっかり暮れ果てた家路を辿っていると、何の変哲もない普段はひと気もない公園にひと集りができていて、何事かと見れば皆一様に、夜空に視線を注いでいる。どうやら月が、そうさせているらしかった。さっき月白(*1)から出たときに見た月が、果たして皆既月食のどの段階にあたるのか、月白へと向かう道にはすでに、赤々とした満月が夕空に浮かんでいるのを目にしていたが、ひとしきり話をしてから外へ出て見ると三日月のようになっていて、それが

【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第3回|うつわのような庭|石躍凌摩

*** 第3回うつわのような庭 「庭があって、そこに森があるんです」 「森、ですか」 「そう、来たらわかると思います。そろそろ手を入れないといけないかな、とちょうど思っていたので、アトリエに来られることがあれば、それも見てほしいんです」  陶藝家・|金澤尚宜と、その妻さちによるユニット「あよお」(*1)の、かれらが独立してからは初となる個展が月白(*2)であって、うつわを見ながらそれらひとつひとつの奥にある話を聴いているうちに、かれらが窯を据える天草に行ってみたくなった