【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第12回|雨庭|石躍凌摩
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第12回雨庭 梅雨の晴れ間を盗むようにして伺った月白を、掠めるようにして雨がざっと降りつけたかと思うと、すぐにまた静かになった空へふっと溜め息をもらした客人の様子を見て、雨はおきらいですか、と店主が尋ねる。それはきらいですよ。服は濡れるし、地面は|泥濘むし、外に出るのがおっくうになります、と客人は答えた。
「僕はあんまりそれがなくて、雨でも関係なく出かけますね」
「本当ですか、珍しいですね」
「雨はどこも人が少ないので、むしろラッキーだって思うこともある」