【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第11回|猫の消息|石躍凌摩
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第11回猫の消息1
暦に春ときこえても、春色はまだととのわず、鳥のさえずりばかりの春か——立春にはきまって、そんな心持になる。そうしてこの春は鳥ばかりでなく、猫も鳴いた。
この二月まで住んでいた家の辺りには、見覚えのあるかぎりで五、六匹の猫がいて、色も柄も様々に、おそらくはみな野良であった。そのうちのどれかは分からないが、春の立つか立たないかに、夜になるとしきりに鳴くようになった。にゃあにゃあやるうちはまだ可愛いものだが、夜にきこえてくるのは咽喉を震わせて唸る