【連載】すべてのひとに庭がひつよう 第10回|こころ|石躍凌摩
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第10回こころ1
思えば私は生まれてこのかた、ひとの心に関心を寄せたことがあまりなかったと、漱石の『こころ』を読んで感動し、それからまた辟易するようにして、そう気付いた。そこが自分の倫理的な弱点であったのだと。そうして、おそらくは心と関わることの不得手なために、そこから逃れるようにして、私は庭に行き着いたのではないだろうか。
ところがここまで庭のことを書き連ねてきて、ようやく私は、そこからひとの心を考えてみたいという気になった。心を避けるようにして至り着いた