星の味 ☆7 “夕暮れをめぐる”|徳井いつこ
本に没頭しているうち、すっかり暗くなってしまった。
明かりをつけようとして、思いなおす。
外の世界が青く染まりはじめ、部屋に薄闇がしのび込んでくる夕暮れどきは、いつもためらわれる。
読み続けるには、いささか暗いが……明かりを点けてしまうと、何かを閉めだしてしまう気がする。
ハンス・カロッサの『指導と信従』を読んでいた。
風変わりな題のこの本をときどき開きたくなるのは、リルケとの最初の出会いが書かれているからだった。
カロッサが「嘆きの調子を含んでいる頌歌」と呼