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星の味 │ 徳井いつこ

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日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を…
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#小説

星の味 ☆13 “自分以上の生命”|徳井いつこ

 エミリー・ブロンテの詩を初めて読んだのは、片山敏彦さんのエッセイだった。キーツやヴァージニア・ウルフにふれ、イギリスの詩文学のなかでプラトン的特質がさまざまに蘇っているのは面白いと語り、片山さんはこう書いていた。 「私はヨーロッパの旅の宿で、自分の心をはげますためにこの詩を訳してみたことがあった。   ……たとえ 地球と人間とが亡び   太陽たちと宇宙たちとが無くなって   後に残るのは ただあなただけになっても   すべてのものは あなたの中で存在するだろう。   

星の味 ☆3 ”自由の訓練”|徳井いつこ

 自由とは何だろう?  そんなことを考えたのは、トーベ・ヤンソンの『島暮らしの記録』を読んだからだった。  カバーには簡素な島のモノクロ写真。ページを繰ると、最初にこんな文章があらわれる。 「わたしは石を愛する。海にまっすぐなだれこむ断崖、登れそうにない岩 山、ポケットの中の小石。いくつもの石を地中から剥ぎとってはえいやと放りなげ、大きすぎる丸石は岩場を転がし、海にまっすぐ落とす。石が轟音とともに消えたあとに、硫黄の酸っぱい臭いが漂う。」  なんと、やってることがスナフキ