マガジンのカバー画像

星の味 │ 徳井いつこ

11
日常のふとした隙間、 ほっとため息をつくとき、 眠る前のぼんやりするひととき。 ひと粒、ふた粒、 コンペイトウみたいにいただく。 それは、星の味。 惑星的な視座、 宇宙感覚を…
運営しているクリエイター

2024年2月の記事一覧

星の味 ☆4 “奇妙な惑星の奇妙な人々”|徳井いつこ

 シンボルスカの名を初めて聞いたのは、30年前のことだ。  当時ロサンゼルスにいた私は、こつこつ石の本を書いていた。 「どうして石の本?」と無邪気に聞かれるなかで、アルメニア系アメリカ人のその友達だけは、いたずらっぽい顔で「ヴィスワヴァ・シンボルスカを知ってる?」と尋ねたのだ。  知らない、と私は言った。  舌を噛みそうだね、その名前? 「ポーランドの詩人だよ」  と友人は笑った。 「石の詩を書いてる」  私たちはふたりとも赤ん坊を育てている最中だったが、彼女は夜中にキッチン

星の味 ☆3 ”自由の訓練”|徳井いつこ

 自由とは何だろう?  そんなことを考えたのは、トーベ・ヤンソンの『島暮らしの記録』を読んだからだった。  カバーには簡素な島のモノクロ写真。ページを繰ると、最初にこんな文章があらわれる。 「わたしは石を愛する。海にまっすぐなだれこむ断崖、登れそうにない岩 山、ポケットの中の小石。いくつもの石を地中から剥ぎとってはえいやと放りなげ、大きすぎる丸石は岩場を転がし、海にまっすぐ落とす。石が轟音とともに消えたあとに、硫黄の酸っぱい臭いが漂う。」  なんと、やってることがスナフキ