【シリーズ「あいだで考える」】最首悟『能力で人を分けなくなる日――いのちと価値のあいだ』の「はじめに」を公開します
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はじめに
中高生のみなさんと話をします。
年が移り、私は87歳になりました。諸事なめらかに進みません。家では4人兄妹の末っ子の星子と星子の母親と私の3人暮らしです。星子はいわゆる重度障害者ですが、47歳で、言葉はなく、目が見えず、食べることをはじめ自分の身の始末をしません。音楽が欠かせず、そして寝ている時も起きている時も、さもおかしそうに、くつくつ笑います。ほんとうに福がやってくるようです。
星子の世話は母親で、母親の世話は父親で、じゃあ私の世話はというと、星子