【シリーズ「あいだで考える」】奈倉有里『ことばの白地図を歩く――翻訳と魔法のあいだ』の「はじめに」を公開します
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はじめに ——印刷機からのメッセージ
ああどうしよう。困ったことになったぞ。
おや、きみは新顔だね。はじめまして。ぼくはいまきみが手にしている白地図を印刷した印刷機だ。えっ、印刷機がしゃべるもんかって? まあまあ、しゃべったっていいじゃないか。だってこれから出かける世界には、妖怪もいるし迷信もあるし学者先生もでてくるし、おまけにきみは魔法が使いたいっていうんだろう? じゃあ印刷機だっておしゃべりするさ。
それより、困ったことになったんだよ。ぜひきみの手をかしてほ