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お茶にしましょう

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文人会の若宗匠・如翺(ジョコウ)先生とその弟子・寿(ジュ)との往復書簡。 茶とは? 花とは? 日本的教養とは? 江戸時代以来の「文人茶」を継承しつつ、令和時代の「新しい茶会」を実…
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#煎茶

12│「余」と「白」についての前編

如翺から寿さんへ ◇ ロンドンでの発表原稿と、自身の違和感  「余白」という言葉。  その響きは心地よく、シンプルで、透き通るような爽やかさ、クールさを感じさせてくれます。また、この言葉自体、はっきりとした定義づけを許さない曖昧さがあり、より神秘的な印象すら与えます。  外国語に訳しにくいであろうことが簡単に想像できるこの言葉。だからこそ使えば、「日本的だ」と言って喜んでもらえるに違いないこの言葉。  私は「少しずるいな」と自分自身でも思いながら、先日、ケンブリッジ大学

11|夏の名残とクールな茶

寿から如翺先生へ ◇  ウースターで煎茶を 「お茶にしましょう」  ロンドンへ行きたしと思へども、ロンドンはあまりに遠し。  せめては、こんな玩具を取り出して、気分だけ味わうことにしました。  ロンドンはヴィクトリア&アルバート美術館のコレクションを、アメリカのフランクリンミント社が復刻通販したミニチュアで、世界各国の名窯シリーズ12種のうち、これは(なんちゃって)ウースターです。  イギリスのウースター窯は1789年にイギリス陶磁器界初の王室御用達の称号を得て、現在も

10|絵の中の滝から、水を汲んで

如翺から寿さんへ ◇ 大英博物館で煎茶会  毎年、毎年のことではありますが、本当に残暑が厳しく、エアコンの効いた室内から扉を開けて外に出ると、むしろサウナの中に入っていくような感覚になるほどです。    いつもいつも、私からのお返事が遅く、大変失礼をしている次第ですが、今回はちょっとした言い訳があります。8月、パリ・オリンピック期間中、ロンドンの大英博物館で、煎茶会を開かせていただいておりました。  大英博物館の日本ギャラリーでは、現在(2024年4月~2025年3月)、

7|フェンネル、かのこ、つくねいも

寿から如翺先生へ ◇   「茶椀の岸に見える美麗」 「お茶にしましょう」  今日は、編集者のOさまのドイツ土産、フェンネルティーをいただきましょう。お茶うけは栗かの子。こちらは別の方からの信州土産です。  フェンネルと栗。  意外な出会いのようですが、実はともに聖ヒルデガルト(*1)お勧めの健康食材で、聖ヒルデガルト料理研究会HPには「栗とフェンネルのスープ」も紹介されています(*2)。  このフェンネル、生まれて初めて飲んだ時には飲みにくさに驚きました。ところが不思議な

5|だんごセットと「ひま」とアマ

寿から如翺先生へ ◇ あみじま茶屋にて 「お茶にしましょう」  と思って、せっかく訪ねて行ったのに会えなかった!という十時梅厓のお話、楽しく拝読しました。  桜のあとの新緑の爽やかさも、また格別の大川河畔、 (訪問先の岡田米山人の文房はあのあたりだったのかしら…) と対岸を眺めつつ、今回、私は藤田美術館のあみじま茶屋でお茶することにしました。「お茶とだんご」セットは、抹茶・煎茶・番茶の三択ですが、もちろん煎茶でしょう。ここは、なんといっても「青湾」の地なのですから。  美

4|桜-sakura-の大川と、「ひま」な人たち

如翺から寿さんへ ◇ 大川沿いの桜並木で  京都から南西へおよそ60キロ。  小さな旅を続けてきた淀川の流れは、大阪市都島区毛馬のあたりで新淀川と旧淀川とに分岐して、旧淀川(現大川)は真南へと向きを変えます。遥か大阪城を正面に望みながらも、流れはお城の手前でぐいと曲がって今度は西に。ほぼ直角に流れが折れるその角には、帝国ホテル大阪があったり、一般的な桜の時期に少し遅れて満開になる、造幣局の桜並木があったりして、今も人々が往来します。  私もこの辺りを散歩しながら、外国人

3│ラテとソフトクリーム

寿から如翺先生へ ◇    スタバで「お茶」 「お茶にしましょう」  先生がスタバのドリップコーヒーで「お茶して」いらっしゃる姿を思い浮かべた私は、つい最近、私も同じように言って娘とスタバに入った時のことを思い出していました。   「抹茶ラテ、ふたつ」  娘がカウンターでそう言うと、お店の方に、 「抹茶ティーラテ、ふたつですね」 と言い直されたそうなのです。  テーブルに戻ってそう報告する娘に、私は思わず反論していました。 「抹茶ラテ、でしょ。抹茶ティーラテじゃ、まるで

2│ドリップコーヒーと和装の麗人

如翺から寿さんへ ◇ 自分の部屋に戻って来て    私もお茶にさせていただこうと思います。  寿さんの文章の中で「バナナ(芭蕉)」が出て参りましたが、ちょうど、昨日お稽古に来られた方が、大阪・四天王寺近くにお住まいの方で、有名な土産物のひとつ、バナナカステラ「名代 芭蕉」を持って来てくださいました。  これには軽くコーヒーかな、と思い、スターバックスのドリップコーヒーを持ち帰りました。バナナカステラを食べて、コーヒーはまだ残しておいて、私のパソコンに向かう時間です。