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ジョイフルな思い出。


学生時代の負のエピソードが30歳を超えた今でも消えきらず、偏見まみれの色眼鏡をかけて街を出歩く日々。

9月に入り、夏も終盤。セミの鳴き声はほとんど聞こえなくなったが、通勤で駅まで歩くだけでシャツがペタッと身体に張り付く。
左から電車がやってくるが、ノイズキャンセリングイヤホンのせいか近くに来るまで気が付かなかった。
電車に乗り込み、マナー通り中程まで進み吊り革を右手の中指1本で掴む。
左手にスマホを持ち、ラジオを聴きながら本を読む。窓ガラスに反射して、前に座っているお姉様がInstagramらしきものを眺めているのがわかる。
次の駅に着くと、20代後半あたりのカップルが乗り込んできた。なぜカップルとわかったかというと、下はユニクロのジーンズ、上は何かのバンドのお揃いのTシャツだったからだ。まだ田舎エリアの駅で、満員電車にはなっていないが2人の距離はとても密だ。人目を憚らずに近寄り、はっきりと聞こえる音量で会話をしている。共通の友達?か何かの愚痴の様だ。男側が彼女に対して永遠に語っている。

人前かつ彼女の前で堂々と人の悪口を言う男に彼女ができて、なぜ俺には彼女ができなかったのだろうか。
はぁ、世の中やっぱりこんなものか。
ペアルックで堂々と電車に乗れるようなタイプの人やっぱり苦手だわぁ。
また、ルサンチマンが顕になる。

と、考えるのは今までの自分だ。
クーラーが効いているはずなのだが、汗がジワっとでてくる。

今の自分は頭の隅に
『ペアルックを着ている人が悪いのではなく、シンプルにそいつらのマナーと性格が悪い』と言う思考がハッキリと見える。

学生時代から交友関係が狭かったので、自分の思考を周りに聞いてもらったり
逆に周りの意見を聞いたりすることが少なかった。
複数人でつるんだりとか一切してこなかった。
朝井リョウの『何者』を拝読し、主人公の思いに大いに共感したのだが
自分はそもそも就活をみんなでやったりとか一切してこなかったので
心の中で思うだけで終わっていた。

そんな自分に転機が訪れた話がある。
昨年、仕事で一緒になった女の子とランチに行った。
駐車場も広く、PCも開けるのでファミレスに入った。

メニューを決める時、寝起き早々radikoのタイムフリーをかけ流すのと同じように、思考停止で日替わりランチを頼んだ。
そして彼女は、なんと限定メニューのヒ◯ルのハンバーグを頼んだのだ。
彼女がその時に放った一言が
『これすっごく美味しいんですよ!ヒ◯ルのこと知らんす〜って食べない人多いかもですが、私はこればっかり食べてます♫』

と言われた瞬間、バリバリっと脳に稲妻が走った。
まず普通にヒ◯ルとかちょっと嫌いだし、こう言う人が好きな人ってなんか頭悪そう=ヒ◯ルのハンバーグを食べる人はバ◯だ。
もちろん、性格の悪い自分はそう思う。
はずだった。

あんなピュアな目でハンバーグを語られたら『そうだよね!ハンバーグが美味しいから頼むことの何が悪いのさ!』そう心から思ってしまうのは必然である。

もっとシンプルにピュアに生きていきたいと。
自分の至らなさに、心の中で大粒の涙を流しながら日替わりランチを完食した。
唐揚げにかかったスパイスがいつもより辛口に感じられた。
やはり色々な人と会って話すのは大切だ。
本当にありがとう。

翌日、1人で別店舗だが同じファミレスに行き1人で
『コッ、コレクダサイ・・・』とヒ◯ルのハンバーグを食べた。
びっくりするくらい美味しかった。
この感想を彼女に共有したかったが、とてもじゃないが話せなかった。

ヒ◯ルさんとそのファンのみなさん、本当に申し訳ございませんでした。
そう思い、家でYouTubeを試しに見てみたが1ミリも面白くなかった。
でも味が美味しければ、それで良い。

偏見という名のバリアがパリンっと割れた気がした。

俺も1ミリくらいは成長できたかな。

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