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失敗も成功も現場が教えてくれた。開発責任者が語るプロダクト開発の裏側

SoftRoidの共同創業者であり、現在は技術サイドを統括する吉田に、現在のミッション、創業時のエピソード、新プロダクト「zenshot AI」の開発をはじめとする今後のSoftRoidについて、聞いた。


プロフィール


吉田 岳人 / Taketo Yoshida
株式会社SoftRoid エンジニア。東京大学・大学院にて知能機械情報学を専攻。
機械学習によるロボット制御の研究を行い国際学会にてBest Paper Award受賞。
卒業後、東大発のAIスタートアップでにて建設機械の自動化PJに従事しアルゴリズムやシミュレータの開発を行う。深層強化学習のOSSの開発にも従事。
2020年7月に株式会社SoftRoidを創業し、AI/Web/データパイプラインの開発をフルスタックに行う傍ら、現場サポートや営業を通じ現場理解を深める。

現在のSoftRoidでのミッション 

ーー吉田さんは、現在どのような役割を担当されていますか。
 「現場を支え、産業を飛躍させる技術基盤」の構築というビジョンの実現を技術サイドで支える役割です。現場という物理的な空間をデータ化するアルゴリズムやシステムとそのデータを基に業務を改善できるアプリケーションの開発を広く担当しています。
 中核となる画像処理や機械学習アルゴリズムのR&Dやシステム全体のアーキテクチャなどを設計・マネジメントし自分でも実装し、業界を変えるようなプロダクトづくりを技術サイドで支えていくのが私のミッションです。
 具体的には、 開発全般のマネジメントおよび開発のプレイングといったところです。自分でも手を動かしながら、人にもお願いしながらという、プレイングマネージャーですね。Web開発、機械学習(画像関連のアルゴリズム開発)、データのパイプライン開発(現場から送られてくるデータのパイプラインを安定的に稼働させる)といった業務を担当しています。


創業経緯 

 
ーーSoftRoidの技術サイドを支えられている吉田さん。ずっと建設×AI一筋?

 元々、学部時代はエンジンや物理学が好きで、航空宇宙工学科というところでエンジンの勉強をしていました。ただ、分野としてすでに成熟していて、若者が出せるインパクトはそこまでないのかなと、進路について悩んでいました。。そんな中、AlphaGoの登場や機械学習ブームがあり、制御や画像処理でも技術革新が起きていて、現実世界の理解や機械の制御等で、リアルワールドでも使えそうだな...と、感じ大学院から機械学習やロボットの専攻に進み修士を取りました。 
 新卒の就職先でもAIスタートアップで建機の自動化を目指すプロジェクトに従事しており、図らずもずっと「建設xAI」という分野にいます。建設業はWeb・IT技術だけでは解けない課題が多くあり、インフラとなる産業のため課題が根深く規模が大きいです。そのため、必然的にリアル産業をデータやAIで変革することで社会にインパクトを出したいという私の興味と合致してきたのかなと思います。そこに一貫性を持ってやっていますね。

ーー野﨑さんとの出会いは学生時代に?

 はい。元々、私が在籍していた研究室の先生と代表の野﨑さんが一緒に研究していたというつながりです。野﨑さんは外資系コンサルに私はDeepXに入社し、別々の道を進みましたが、ロボットスタートアップをやっていた野﨑さんに誘われてその会社に転職しました。コロナ禍でロボット事業の撤退・チーム解散を経験しましたが、まだまだ産業を変えるような挑戦がしたいという想いで野﨑さんや山田さんとSoftRoidを共同創業しました。

ーー創業期はどういう動きをしていたんですか?
 まず創業者なので、何をしてでも事業を前に進めるという意識で動いてました。
 創業1年目などは営業して売りながら顧客を知ること最優先でしたので、エンジニア出身でしたが知り合いづて・テレアポでアポ取って商談して契約取ったり、時には工事現場に飛び込み営業したりしてました。今は営業に強いメンバーが揃っているので、本来の技術サイドの仕事に注力してますが、その頃の商談や現場でのサポート業務をする中で顧客の業務や業界構造を深く知ったことが今のプロダクト作りに生きているかなと思います。

zenshot開発秘話 

ーー現在提供しているzenshotを開発するに至ったきっかけを教えてください。

 ロボット事業を模索していた当時、作っていたのが階段を登れるロボットだったこともあり、建設業界をターゲットとして考えました。(詳細は代表の野﨑のnote参考)
 そこで、現場を記録することに多く人手と時間がかかり現場に負荷がかかっていることを実感したのがきっかけです。
 解像度を上げるために野﨑さんが地元の香川で監督の見習いをする中で現場監督が人手で何時間もかけているのを目の当たりにしました。毎日毎日、上下左右前後の全方位の部材を部屋ごとに大量の写真を撮っていく業務に現場監督が多くの時間をかけていました。
 また、大手ゼネコンで現場監督をしている同級生にヒアリングの機会をもらうと、夜の11時に現場からツナギ姿で応じてくれたんです。背景は、どう見ても現場の事務所でした。「大学や大学院の建築学科を卒業し、大手ゼネコンに就職して現場監督、施工管理の業務に就いたような人でも、毎日ひたすら写真を撮っている。」現状が見えてきました。

野﨑さんが現場監督見習い時代に実施していた業務
鉄筋の種類ごとに色の違うマーカーをつけて巻き尺を当てて写真を撮る業務を、
全方位・各部屋ごとに繰り返していく

ーー多くの時間をかけて現場の記録を取ることにどういう意味があるのでしょうか?

 現場の記録を取ることは建設業の本質業務なんですよね。
 創業期に知り合い伝手に紹介いただいた青森県弘前市の建設会社の社長に現場のことや業界のことを教えてもらいに会いに行った時に、「写真はお金なんですよ」と教えてもらいました。 建設業って、ビルの工事ならディベロッパー、家の工事なら住宅を購入した消費者に対して、建物を納品しているように見えて、実はそうではない。壁や柱の中がハリボテではなく、しっかりした強度になっているのか、買っている人には分からないので、品質の保証―壁の中の骨組みなど、見えないところまできちんと出来ていますよという、それを裏付ける大量のデータが納品物なんだ、と。つまり、“データをたくさん取って、品質を保証する”というのが、建設会社の本質業務なんだということが「写真はお金なんですよ」という言葉の意図でした。

弘前市には巨匠前川國男の建築物が多くあります。
弘前の建設会社の社長には建築の歴史についても多くのことを教えていただきました。

ーー示唆深いですね。その言葉が今のプロダクトにつながっているんですか?

 はい。今のプロダクト開発の哲学になっています。データによる品質保証が建設業の本質業務だが、データを効率的に取得するソリューションが全くなく人手で支えられていたんです。というのも、製造業のように納品対象物ー例えば壁ーをセンサーでセンシングしようとしても最初は壁がないですし骨組みができてきてからつけても次に壁のボードや壁紙を貼っていく時に邪魔になってしまう、監視カメラを置いて映像で記録しようにも内壁ができたら一部屋分しか写らない、と言った具合でうまく効率化ができないんです。そう言った状況で、効率的に現場データを取得するプロダクトを提供したら業界の負を解決できるのではないかと思い、「360度カメラを持って動画を撮るだけで現場のストリートビューのような形式を生成できる」zenshotの開発をしました。

これからのSoftRoidについて

ーーこれから先、どのように進んでいきたいですか。 

 ニーズや顧客の業務の解像度も上がり、こういうものを作ったら売れるということが分かってきたので、どんどんプロダクトを進化させていきたいですね。
 今のプロダクトは、現場のストリートビューを自動で生成するという段階で、それを作るための機械学習、画像処理のデータパイプラインが回っているのですが、全国の現場から上がってくる動画データの量が非線形に増えてきている状況です。そういった状況下でも安定して処理していけるパイプラインを作ること、ソフトウェアの品質をあげていくこと、というのが喫緊の課題です。
 加えて、今は「zenshot AI」という新プロダクトを作っているところです。
今まではデータを取って可視化する、というところをサービスにしていましたが、そこを越えていきたい。可視化による業務削減はできたので、次は分析して、データを梃子に業務の標準を刷新して生産性を改善していくところまで、データをテコにしたプロダクトを作っていくというところを進めていきたいです。新プロダクトは、データの分析をして、定量的に生産管理をしていくもので、現在まさに顧客・現場の反応を見ながら、R&Dをしつつプロダクト開発を進めています。

データの収集・可視化・分析・改善という製造業で起きたIoT/データによる生産性向上サイクルを
建設業でも回していくために、まだ前半ができてデータが蓄積できるようになっただけ。

ーーその中で、吉田さんの今後のミッションは。
 やはり技術面を支えていくことになると思います。Webから機械学習、アルゴリズム、パイプライン―zenshotというプロダクト開発の全体を広く見てきたことが自分の強みだと思っているので、それを生かしてプロダクトで業界を変えていきたい。業界を変えうるプロダクトと組織を作っていくことが、自分のミッションだと考えています。最先端の技術を現場で日々使ってもらい業務が改革されることが大事。現場データから価値を引き出すAIアルゴリズムの開発と、実際に業務を変えて価値を届けるWeb開発のどちらも大事。きちんと全体を見ながら、プロダクト開発を進めるのが自分の役割だと思っています。
 コードの品質も上がってきましたがまだまだ終わりなき取り組みです。大手企業への提供をする上で品質は必須。今はプロダクトとしてより進化させていく段階なので、全体のバランスを見つつ、品質を上げながら機能を作っていくことにこだわって進めていきたい。
 それから、チーム作りもしていきたいですね。

ーーどんな開発チームにしていきたいですか。

 技術的な競合優位性のあるプロダクトで、業界にインパクトを出しつづけるチームにしたいと思っています。
 そのためにこだわっていきたいことは、大きく分けて三つ。
 一つ目は、Tech Diffrence。私たちの強みである機械学習とWeb開発をしっかり融合させて作っていきたい。特に建設業はWeb開発だけでは解けなかった問題が多く残っている業界ですから、Web開発に機械学習を融合できる我々だからこそ解ける課題があると思っています。
 二つ目は、産業へのインパクト。お客さんの要望を聞いて、欲しいと言われたものを作ることも大事なことではあります。でも、私たちは、言われた通りに作るだけではなく、業界としてどうあるべきなのかを考えながら、ビジネスサイドとも技術サイドとも話しながら、産業へのインパクトを逆算しながら作っていく、というやり方を続けていきたい。「zenshot AI」もまだ途上なので、そういうことをしっかりやりきってプロダクト開発していきたいと思っています。
 三つ目は、プロダクト開発で、再現性が高い形で持続的に業務を変えていくこと。新規技術の検証プロジェクトを単発でやっていくという話ではなく、実際に業界を変えていきたいので、毎日使われるプロダクトを作っていくことが非常に大事なんです。
 この三つにこだわりを持っているメンバーで構成されたチームを作っていきたいですね。
 それから、WebエンジニアとAIエンジニアの協調と融合もとても大切です。プロダクトを一緒に作っていく仲間ですから。僕自身も、新たにチームに加わってくれた人にもしっかりと活躍してもらえるよう、サポートしたいと思っています。

おまけ:現場のここが好き

ーー建設現場のどこが好きですか?
 結局、現場がすべて教えてくれるんですよね。業務のこと、どんな工事がされているか―それだけでなく、自分たちの考えが間違っていたり、甘かったりしたら、それも突きつけて教えてくれる。失敗も成功も、すべては現場が教えてくれるんです。創業期に1ヶ月間毎日常駐したのに全く使ってくれなかった現場もあれば、プロダクト改良後に実際に毎日撮影してくれる職人さんがいて「すごく助かっている」という声を伝えてくれる現場もありました。
 最近(2024年3月)入社したエンジニアの曽根さんが採用面談の過程で「現場に行きたい」と言ってくれたので静岡の新築戸建て工事の現場を案内しましたが、新築の現場に行くと、木のいい匂いがするんです。「いい匂いだね」と話していました。いい匂いがするところも好きですね笑

エンジニアの曽根さんと静岡の現場見学に行った後に寄った海。
現場に行く時は作業着を着ます。

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