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重雲のモチーフ考察[原神]

今回は重雲のモチーフ考察を行いました。
他の璃月キャラと同じく、易経や道教の影響が色濃いキャラクターですが、特に太極拳など武術を意識したキャラのようです。

邪気がよりつかない訳

前提知識・陰陽論と易経

陰陽論とは、世界が陰の気と陽の気でできていると考える古代中国の哲学です。

陽と陰が合わさる陰陽のマーク

基本的に陰と陽は対立するものを表しますが、陰だけでも陽だけでもだめで、世界はバランスが保たれるべきという考えに基づいています。

この陰陽論は易経や道教に結びつけられています。

易経とは、世界や個人の陰陽の気が今どんな状態なのか、線で表現する中国古代の占いです。

陰と陽の線の組み合わせで、その人の今の状態がわかる。

純陽の体

重雲は全てが陽となっている乾卦(純粋な陽の卦)です。
これを易経において「純陽」といいます。
陰の気が入り込む要素はない状態です。
(陽の気だけであれば良いというものでもなく、世の中は陰陽のバランスが取れた状態が最も良いと言われています。)

あまりにも強い陽の気を持った体のため、重雲は妖魔退治をする方士であるはずなのに、妖魔が寄りつかないという特性を持っています。

桃木剣

重雲は氷で桃木剣を再現しようとしました。

桃の木は中国において邪気を払う霊木(桃の木)とされており、桃木剣は道士(道教)の武器として知られています。

桃木剣

衣装の卦と天賦

衣装の卦

道教の道士の服には、卦が描かれているのですが、重雲の衣装にも卦(易経の占い結果)が3つ描かれています。

1番上は震卦で雷を表します。
2番目は坎卦で水を表します。
3番目は艮卦で山を表します。

この3つの卦は天賦の説明文とも繋がってきます。

天賦

霊刃・雲開星落
→雲(重雲)開いて星(恐らく桃木剣=霊刃のこと)を落として妖魔を倒すという意味。

璃月の仙人キャラは四遊記(そのうちの一つが西遊記)に影響を受けているのですが、重雲のこの天賦名も恐らく西遊記を意識しています。

四遊記は道教の影響を受けており、神仙と妖魔の戦いを描きます。

『這大聖把金箍棒幌一幌,碗來粗細,把那夥賊打得星落雲散。』
孫悟空が如意金箍棒を使って賊を打ち砕いたシーンで、「星落雲散」という表現を使います。
孫悟空の如意金箍棒を、重雲の桃木剣に置き換えているようです。

天賦の説明文
「卓越した剣が天地を行き交い、寒光がつららとなる。如律令!」

この文の出処は、道家(道教)の呪文です。

太上三洞神呪 (雷の呪文)
「賜剣召雷神。上按九天炁,后灿七星明。卓剣天地動,雷火電光生。急急如律令。」
〈剣を賜り雷神を召喚する。九天の気を押し上げ、七つの星を明るく輝かせよ。卓越した剣が天と地を動かし、雷、火、稲妻を生む。急急如律令!〉
易経の震卦で雷を表したのは、この天賦と関係しているからかもしれません。

霊刃・重華積霜
天賦名は中国の南北朝時代に書かれた舞鶴賦という詩の中の『叠(積)霜毛而弄影,振玉羽而臨霞』(霜の毛が重なって影を作り、玉の羽が振動して雲を作る。)をアレンジしたものだと思います。

この詩は仙境から鶴が人間界に降り立ったという内容です。少し申鶴を連想させますね。
天賦の説明文も上の文と少し繋がっています。

天賦の説明文
(日本語版)
珠玉が鳴り、世界は静まる。川は止まり、雲は霜となる。如法開壇、妖魔退散。

(中国語版)
琳琅振响、十方静默。江河不动、重云凝霜。如法开坛、诸邪退散。

道教の澄清韻(浄化の呪文)
琳琅振响、十方粛清。河海静黙、山岳吞烟。
(美しい玉が響き、世界は粛清される。川と海は静かで,山岳は煙を飲み込む。)

坎卦で水(川)を表し、艮卦で山を表したのはこの天賦と関係しているからかもしれません。

固有天賦・吐納真定
吐納は、吐故納新(とこのうしん)という道教の修行法の1つから。練丹術(気功法)に通じる修行です。
真定は、道教・太極拳門の極意から。
無の境地に静まり、真の集中に入ること。


固有天賦・追氷剣訣
剣訣は、道教において呪文を唱える時の仕草で、人差し指と中指を立てて他の指をおっている状態を意味します。太極拳でも行います。

剣訣。剣を持っていない方の手でやります。

命の星座

命の星座は乾坤鋒座。
乾坤は、乾(天や陽)と坤(地や陰)を意味し、鋒は剣先を意味します。

易経の繋辞上伝を意識した用語でもあります。
「天尊地卑。乾坤定矣。」
(天は地からすると高く聳え立っており、地は天からすると低くへりくだっている。よって、天を乾と定め、地を坤と定めた。)

1 釈凌詠氷(中国語→释凌咏冰)
道教の代表的書物である、老子の『道徳経』より。

與兮若冬渉川、猶兮若畏四隣、儼兮其若客、渙兮若冰之將(凌)釋(釈)、敦兮其若樸、曠兮其若谷、混兮其若濁。

釈凌▶︎凌釈
「道」(道教に関して)を充分に修めた(修行した)人は、解けてゆく氷の様に素直であるという意味。

詠氷は、詩に氷に関することを書いたりよんだりすること。

2 周天の回転
大周天・小周天など、練丹術(気功法)に通じる言葉です。
気功で自分の体に気を周回させることを小周天といい、気によって天地と交流を行うことを大周天といいます。

重雲の場合、体内の陽の気を自らの体内に循環させ、天地との交流も行うということだと思います。

3 雲の果てに光あり(中国語→云尽光生)
宋の柴陵郁禅師の詩より
「我有明珠一顆,久被塵勞關鎖,今朝塵盡(尽)光生,照破山河萬朵。」

道士(方士)ではなく、禅師(僧侶)の言葉ですが、修練の結果、私が持つ明珠(仏性)が世の山河を照らす太陽のようになっていった(煩悩から逃れ悟りに達した)という意味。

これを重雲のような道士(方士)に置き換えると、修練の結果、成果が出たと考えられます。

4 浮雲霜天
梁の簡文帝の漢詩「詠雲」より。
浮雲五色をのばす 応に霜天なるべし」

霜天は霜の降りた冬の明け方の空のことです。

浮雲=重雲、
霜天となる=純陽の体に悩まされていましたが、彼の修行と強い願いが氷の神の目を授かることに繋がったということだと思います。

純陽の体は熱し易い体なので、炎元素の神の目をもらうかと思いきや…淑女のように、炎の力を抑える氷の力を与えられました。

純陽の体のせいで、何もしなくても妖魔が彼を避けていきます。そのため、重雲は偽物だと罵られることも多かったです。しかし、それでも諦めずに修行を続け、世の全ての妖魔を退治しようという意気込みを持ち続けました。

その結果、ある意味純陽の体を抑えるような氷元素を手に入れました。
神の目のストーリーに、『しかもなんと(神の目は)炎の対立である氷だった』とわざわざ書かれています。

5 真道の正理
真道は道教を意味する言葉です。つまり、道教の正理(正しい道理)


6 四霊の捧げ

道教における
青龍帝君孟章、白虎帝君監兵、
朱雀帝君陵光、玄武帝君執明。

つまり日本でも有名な四神(青龍、白虎、朱雀、玄武)のことです。

中国語では「四霊捧圣(聖)」と書かれていることから、「五龍捧圣(聖)」という中国の伝説が関係していそうです。

道教の修行を武当山でしていた人が、ある時崖の下に向かって飛び降りて命を捧げようとしたところ、五龍が彼を助け彼は聖人となったという伝説を「五龍捧聖」といいます。つまり、この五龍を四霊に変え、四霊に聖人として認められたことを意味すると思います。

※武当山はちなみに、道士の聖地でもあり、太極拳の修行が行われてきた山でもあります。

1.2凸が修行に関することで、
3.4凸でおそらく神の目を手に入れ、
5.6凸で道教の真理に達して神仙(聖なる存在)となる。

修行の成果によって道士として道を極める過程を表しているようです。

衣装

璃月のキャラの多くは易経や道教に基づいていますが、中でも重雲は、他のキャラに比べて気功や太極拳のような道士の武術の要素を感じました。
(気功、太極拳、易経は道教に結びついているものです。)

衣装は道士の法衣や、太極拳の武術の服を掛け合わせたものだと思います。
(厳密には道士が太極拳をする場合があるので、同一のものとも言えます。)

卦が描かれているのは道士の服の特徴ですが、卦が書かれている衣の部分が前に長いです。これは道士や太極拳の服の特徴です。

左右で色が分かれているのは、本来道士の服は、この前に長い部分が分離しているからだと思います。

また、道士の服によっては襟の部分をy字に合わせます。ボタンの部分も太極拳の服と似ています。

服の横には道士の武器である桃木剣。

🔗申鶴の考察をした時とはまた違った種類の道士って感じがしますね。

今回の考察は、以前少しだけXに投稿した重雲考察を、大幅に加筆修正したものです。

重雲推しさんに限らず、色んな方に今回の考察を読んでいただけたら嬉しいです。

重雲がこれからも多くの方に愛されますように。

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