見出し画像

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

ギリギリ間に合いました。年末恒例企画「話数単位」。

「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」は、その年に放映されたTVアニメの中から印象的だった話数や優れていると感じた話数を各々のブログなどのWEBサイトにコメントと共に掲載する企画です。

https://aninado.com/archives/2023/12/10/1047/

集計は今年もaninadoさん。

ちなみに昨年の集計結果はこんな感じ。

2022年の1位は『ぼっち・ざ・ろっく!』第8話「ぼっち・ざ・ろっく」でした。2位とは僅差でしたが、『ぼざろ』は第12話「君に朝が降る」でも票を集めていたのがさすがにトータルでの強さを感じさせました。

個人的にもこのエピソードに票を投じてはいたのだけれど、思い入れは断然別の作品にあったのでちょっと複雑な気持ちではありましたね。それが何だったのかは読んで頂ければ分かると思うので以下に貼っておきます。

自分でも読み直してみたんだけど去年はすげえ頑張って書いてるな……いまからこれと同じような分量書くのさすがに辛いので、今年はあっさりめで行かせてもらいます。



『ヴィンランド・サガ』SEASON 2 第4話「目覚め」

脚本:瀬古浩司
絵コンテ:小林 敦
演出:左藤洋二

ダブル主人公であることを最大限活かした作劇に唸った。原作では比較的あっさりと描かれていた「悪夢にうなされるトルフィン」を、徹底してエイナルの視点と内面にフォーカスして掘り下げたのは大正解だったと思う。

2期目は制作会社がWITからMAPPAに代わってるんだけど、主だったスタッフはそのまま移行してて作品理解のレベル深化がすごいんだよね。このエピソードだけじゃなくたとえば第10話「呪いの首」とか、アニオリで掘り下げてくる場所も方向性も的確で、観ていて安心感があった。

『冰剣の魔術師が世界を統べる』第7話「世界最強の魔術師である少女は、魔術学院に潜入する」

脚本:長瀬貴弘
絵コンテ:中津 環
演出:井端義秀

もう単純にアニメが上手いんだよな。TS学院潜入編はあっさり終わって百合の波動を感じさせつつブートキャンプの締め、若人たちを見守る師匠、水着回かと思わせながらいったんスルーして大会に突入、ざっくり準決までスキップしてアホピンクのライブからシームレスにEDに入って水着はここで補完。詰め込めるだけ詰め込んでるけど全然バタバタしてなくてスムーズな作劇。アニメは作画(だけ)じゃないっていうことをあらためて示してくれたこの作品の美点が凝縮された回だと思う。

あと、ここ数年ことあるごとに「榎木くんはなぜ出る作品を選ばないのか?」って言ってきたんだけど俺が間違ってました。榎木くん、アンタすごいよ!

『お兄ちゃんはおしまい!』第12話「まひろのおしまいとこれから」

脚本:横手美智子
絵コンテ・演出:藤井慎吾

『おにまい』という作品をひとことでまとめてしまえば「ハイテンションな作画アニメ」っていうことになろうかと個人的には思うのだけれど、それを1クールやり通して最後に文芸面とガッチリ噛み合ったのが最終回である本エピソードだったと思う。温泉回でもあってしっとりと落ち着いた雰囲気の中で主人公まひろの気持ちに寄り添った演出は、それまでとはまた違った意味で見応えがあった。

『もういっぽん!』第12話「自分史上最強だから」

脚本:皐月 彩
絵コンテ:福井のぞみ
演出:サトウユーゾー

試合シーンの駆け引きや技の応酬などダイナミズムあふれる画作りはもちろんなんだけど、「競技としての柔道」というよりは「柔道を部活でやってる高校生」にフォーカスした作品の構造そのものを心地よく感じていたし、それは一度は引退して戻ってきた姫野先輩の振る舞いに一番よく現れていたと思っていて、この回は涙なくして観られなかった。

『君は放課後インソムニア』第5話「飛び上がり星」

脚本:池田臨太郎
絵コンテ:福田道生、セトウケンジ、伊東優一
演出:篠崎康行

『君ソム』っていう作品自体には、語弊があるのを承知でいえば、ひとつひとつの構成要素に「いかにも日本の青春映画的」なある種のしゃらくささがあるんだけど、このアニメ化に関して言うと、レイアウトや演出の奇跡的なバランスでアニメーションであることの意義のある地平に踏みとどまっていたと思う。学校行事でキャンプに行って夜に2人で抜け出して星の写真を撮りに行ってそのまま眠ってしまう、というこのエピソードには、そうしたある意味では予定調和的な「エモさ」がともすれば醸し出してしまう気恥ずかしさを画の力で飛び越えてみせるんだという気概を感じたし、またそれが成功していると思う。

『江戸前エルフ』第6話「Stand by Me」

脚本:ヤスカワショウゴ
絵コンテ:齋藤徳明
演出:堀内直樹

か細く頼りない小清水の声の演技が素晴らしくて本当に好きな作品なのだけれど、エルダと小糸たちとのやりとりを微笑ましく思いながら、でも不老不死の種族が短命族と仲良くなるのを見るのが辛いな、そいつらはすぐに老いてあなたを置いて死んでいくんだよ、って思ってここまでは観てたんですよね。「楽しいけどちょっとだけ悲しくなるな」と。そしたら直球でそれを見せつけてきたのがこのエピソード。小糸は気付いてないのかなと思ってたんですよね。でも彼女なりにちゃんと理解していたんだっていうのがわかるのがまた切ない。

第9話「Time After Time」と明確に対になっているのでちょっと迷ったのだけれどやっぱりこっちにしました。というのは、EDのCody・Lee(李)「おどる ひかり」も素晴らしいんだけど、作品にインスパイアされて書かれたとおぼしき歌詞と、この第6話の内容とがちゃんとリンクしてるんですよね。意味がわかって聴くとさらに味わい深くなる、理想的なEDだと思います。

『天国大魔境』第8話「それぞれの選択」

脚本:窪山阿佐子
絵コンテ:藤田春香
演出:仲野 良

単純にアニメーションとしてみれば、竹内哲也の1人作監回である第10話「壁の町」も候補になるとは思うのだけれど、やはりこちらで。作中に散りばめられていた謎のピースが嵌まっていくドラマ的な盛り上がりと、哀感あふれる叙情的な演出とが相乗的に観る側の感情を揺さぶる珠玉のエピソード。原作でも大好きな場面であるだけに、最高のスタッフを配して極上の作品に仕上げてくれたProduction I.Gに感謝しかないですね。ありがとう。

▲なんとちょうど第8話までYouTubeでずっと無料配信している。Disney+独占っていうとネガティブに捉える人も多いけど、こういうこともしているので許してあげてほしい。っていうかD+企画の日本産アニメは総じてクオリティ高いというか、見る目が確かだと思う。

『スキップとローファー』第10話「バタバタ ポロポロ」

脚本:米内山陽子
画コンテ:寺東克己
演出:矢野孝典

スキローの原作は、ちょっと嫌な感じで出てきた子がそれぞれ等身大の高校生なりの葛藤とか悩みを抱えているんだっていう当たり前のことを、読者がその子を嫌いになりかけるギリギリ手前で明かしてくるヘイトコントロールが巧みすぎるんだけれど、アニメでそれをやるのは漫画と比べると難易度が高いと思う。そうした、ちょっと間違えると「ギスギス」になってしまいそうな日常のちょっとした行き違いや軋轢を、その都度優しくフォローしていく手つきは原作に勝るとも劣らないものだったと思うし、それは志摩くんがみつみの手を取って劇の一場面を歌い踊るシーンに結実していると思う。一生懸命で、滑稽で、だからこそ美しい、そんな「青春」そのものが描かれている。

『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』第10話「ずっと迷子」

脚本:後藤みどり
絵コンテ・演出:梅津朋美(エディッツ)

昨年は『ぼっち・ざ・ろっく!』に「しばらくはこれを超える、あるいは匹敵するバンドアニメは出てこないかもしれない」と思ったものだけれども、早くもその予想が裏切られたことをうれしく思う。『MyGO』は湿度高めの女女の関係性を軸にしながら「バンドとは何か、バンドをやるというのはどういうことか」という王道のテーマに真正面から取り組んだ快作だったと思う。それが極まったのがこのエピソード。詩が歌詞になり、バラバラだったメンバーがひとりまたひとりと再集結していく中でそれが曲になる。ただの詩の朗読だったものがバンドサウンドに昇華されていく過程そのものをひとつのライブシーンとして描写したクライマックスは圧巻。

前述の「女女の関係性」を重視するなら第7話「今日のライブが終わっても」も選択肢になると思うが、それは「春日影」のライブアクトの高揚感とラストシーンでの長崎そよの台詞との間の落差あってこそのものではあり、楽曲の完成度とドラマとのリンクという意味でそれを悠々と超えてきた本話がやはりセレクトに値するだろう。あとこの曲の楽奈の伸びやかなリフが好きなので。

『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第8話「エコー」

脚本:森瀬 繚
絵コンテ・演出:笹嶋啓一

作品全体にとってターニングポイントになったエピソード。ここまでの主体はあくまでタイムリープを繰り返すコノハだったのが、ここへ来てその「観測者」としての立場を堅持していたマモルくん自身がタイムリープしてしまうことで物語構造がより鮮明になった。ある意味で往年の「エロゲ的」なテンプレートをなぞりながら(それはマモルくんにとってのコノハの存在自体からしてそうだ)ノスタルジーに彩られたお気楽お仕事ものという、ここまでかぶっていたガワが、テックギークであるマモルくんの視点を介することで瞬時にハードSF的な味を帯びてくる。


以上、「話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選」でした。

今年は例年以上にセレクトに苦労した感がありますね。もう観た瞬間これ! っていうような回が個人的には少なくて、実際に選んだ中でいうと『天国大魔境』『江戸前エルフ』『MyGO』くらいかな……。満遍なくよかったからどれか1エピソードだけ抜くのが難しいみたいな作品が多かった気がします。何はともあれこれで2023年も終わり、2024年はまた新しいアニメが始まるのです。


【追記】

年が明けてaninadoさんのほうで集計結果も発表されているので、自分のセレクトとの照合というか答え合わせをやっていきたいと思います。

14票
『BanG Dream! It's MyGO!!!!!』第10話「ずっと迷子」
7票
『江戸前エルフ』第6話「Stand by Me」
6票
『冰剣の魔術師が世界を統べる』第7話「世界最強の魔術師である少女は、魔術学院に潜入する」
5票
『16bitセンセーション ANOTHER LAYER』第8話「エコー」
『天国大魔境』第8話「それぞれの選択」
4票
『お兄ちゃんはおしまい!』第12話「まひろのおしまいとこれから」
2票
『スキップとローファー』第10話「バタバタ ポロポロ」
1票
『ヴィンランド・サガ』SEASON 2 第4話「目覚め」
『もういっぽん!』第12話「自分史上最強だから」
『君は放課後インソムニア』第5話「飛び上がり星」

上位に入ったエピソードもありつつ、自分1人しか選んでいないものもあったりと、それなりにバランスが取れたチョイスだったとは言えそうで個人的には満足です。

全体を見ていて思ったのは、上記あとがき的な部分でも言ったような「満遍なくよかったために票がばらけてしまった」作品としては、2023年は『スキップとローファー』や『お兄ちゃんはおしまい!』『君は放課後インソムニア』あたりがそれに該当するのではないでしょうか。

一方、シリーズとしての評価はそこまで高いとは思えないけれど単体のエピソードの完成度が群を抜いていた例としては、次点の7票を獲得した『川越ボーイズ・シング』第9話「いつかのアイムソーリー」が挙げられるでしょう。

いずれにせよ数十人規模の好事家が各々勝手に選んだものではあるんですけど、そこから読み取れる傾向などが毎年あったりするのもこの企画の面白いところです。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?