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【2023年夏アニメ】31作品の第1話を観了しての雑感まとめ

恒例にしている各シーズンのアニメ第1話感想、2023年夏(7月~9月)クールもひととおりチェックし終わったのでまとめておきたい。今回は自分としてはちょっと少なめの計31作品。中断してた『あやかしトライアングル』『魔王学院の不適合者II』とかも途中から入ってくるから抑えめの本数にしてある。最終的に20~25本完走するくらいの塩梅をいつも目指しているというか、そのへんがあくまで個人的には物理的限界だと思っている。数を競ってるわけでもないので。

最初は記録というか備忘録の意味合いが強かったこの企画だけど、こういった形でまとめることにはそれとは違う意味もあるということが、やっているうちにだんだんわかってきた。書いていると「あれ、俺この作品のこと実はそんなに面白いと思ってないな」とか、逆に「観てるときはそうでもないと思ってたけど実はそれなりに面白ポイントあるな」とか、自分でも意外なところに気が付いたりする。今回だと『わたしの幸せな結婚』は完全にそう。言葉としてまとめることで、自分の中でも漠然としていた価値観を捉え直すことができる。

また、少ないながらも読んでくれる人がいることも一応は意識しつつ、そういう人たちにも自分とはまた違った視点があるということを提供できれば、なお意義があるかなと思っている。まあちゃんとした批評と言うよりは本当に第一印象にすぎないひとこと感想ではあるのだけれど、それでも人の意見を聞くのは面白いじゃん。自分が面白いと思うものを、思いもよらなかった理由で腐してる人とか見ると「へーそんな見方あるんだ」って思ったりするし。毎回言ってるけど褒めるのもけなすのも俺の中では等価値なので。

★は大まかに以下のようなパーソナルな指標。★3と★2の間くらいが継続視聴するかどうかの境界線。

★★★★★ すげえいい
★★★★  かなりいい
★★★   まあまあいい
★★    ちょっとキツい
★     だいぶヤバい

掲載順は東京ローカルの放送順で、便宜的に番号を振ってるけど他意はない。



1 BanG Dream! It's MyGO!!!!!

90分、3話構成の初回放送。正直言ってこの手の「初回○○分SP」は実際観てみると「そんなに尺要らんやろ」という感想になりがちで、水増し感があることが多いのだけれど、この作品に関しては視点を1人のキャラクターに固定した回想で構成された第3話までをセットで観てほしいという意志が明確でよかった。その意味ではこれも厳密には「第1話の感想」ではないんだけど。本編そのものとは本来関係ないけど、CMの枠もキャラクター紹介のショートムービーで埋めてて、まだ馴染みのないキャラクターに対する理解が深まりやすくなってたのも好感。

とにかく『ぼっち・ざ・ろっく!』以後のバンドものは格段にハードルが上がってしまったとも言える中で、もちろん制作期間を考慮すればそれを踏まえたわけでは全然ないのだけれど、『ぼざろ』とはまた違ったよさのあるこうした作品が出てきたことは非常に意義深いことだと思っている。

★★★★★

2 ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~

これも初回60分、2話分の一挙放送。視聴者、特に原作ファンが何を求めているかがよく理解ってるよね。ライザといえば何はともあれ太もものボリューム感、それを措いて他にない。田舎町で生まれ育った退屈とまだ見ぬ世界への渇望、将来への希望と不安、そこに外からやってくる未知の価値観を持った人々との交流。明るくて元気溌剌、ちょっと向こう見ずっていうベタではあるけど共感を得やすい主人公に、振り回されながらもまんざらでもない、それぞれタイプの違う幼なじみの男の子2人が付き従うというキャラクター配置もわかりやすく、着実な導入をこなした。

★★★

3 うちの会社の小さい先輩の話

出来としては普通だと思うけど単純に題材に興味が持てない。『先輩がうざい後輩の話』とかもそうだけど、会社を舞台にしたラブコメって、いい歳こいてどいつもこいつもカマトトぶってんじゃねえって思っちゃうので。

★★

4 実は俺、最強でした?

テンプレ転生で印象があまりなくて、正直これを書く段になってもどんなだったか思い出せなくてHP見た。逆に言うと何も考えなくていいので深夜にボーッと観るにはいいかも。

個人的には小清水が出るまで我慢するかどうか。前クール(4月~6月)に『江戸前エルフ』『異世界ワンターンキル姉さん』『神無き世界のカミサマ活動』と空前の小清水ブームが来ており、今クールはこれと『Lv1魔王とワンルーム勇者』。

★★

5 幻日のヨハネ -SUNSHINE in the MIRROR-

異世界ラブライブ。天下のラブライブブランドだけに手堅い。ただ、手堅くはあるんだけどそれはキャラクターの認知度に依ってる気もするし、わざわざ異世界を舞台にしたことで何を見せてくれるのかに注目したいかな。意外性だけで1クールは保たないので。

★★★

6 無職転生II ~異世界行ったら本気だす~(第2期)

正確には2期の初回は「第0話」で、まあ言ったらつなぎのエピソードなんだけど、全然つなげてなくてこれでいいの? 監督が代わってもあまり変化がない演出は、大作ぶった無意味な間を劇伴で埋めるでもなくただダラダラと垂れ流していて退屈。画的にも雰囲気で誤魔化してるけどバチッと決まってないカットが多くて不安になるのも前期と同じ。まあまだ本編じゃないからちょっと大目に見るかくらいの感じだけど、そんなに期待はできない。

(正式な第1話も観たけど、そんな大した話じゃないのにもったいぶってるのが本当に肌に合わない。だいたいさあ、これで話がつながってるって言えんの? 前期の最後で女いなくなってショックは受けたけど気を取り直してとにかく母親は探さなきゃってわりと前向きに出発して終わったじゃん。いつまで引きずってる体なんだよ。話の都合でキャラクターの心情を盛るなっていうか、整合性は取れよ。辻褄を合わせろ。)

まあたぶん根本的には原作の話が嫌いなんだと思う、俺は。

★★

7 Lv1魔王とワンルーム勇者

みんな言ってる通りこれは「ジャヒー様じゃん!」ってなるのはやむなし。同じSILVER LINKだし、主役も同じ大空直美だし。考えてみれば今クールでは『ジャヒー様はくじけない!』の湊未來監督は『政宗くんのリベンジR』やってるし、リスタートとはいえ『あやかしトライアングル』『魔王学院の不適合者』もあってSILVER LINK作品が多い。

井上圭介監督といえば『はめふら』だけど、SILVER LINKの伝統とも言える定番のドタバタギャグをそつなくまとめる、いわば大沼心イズムが着実に継承されているのを見るのはとてもうれしい。決して派手な作品じゃないけど毎週生き生きと動いているキャラクターたちに会うのを楽しみにしてしまう、それってTVアニメにとって最も大事なことのひとつではないかと思うのだ。

★★★★

8 おかしな転生

設定はわかった。描写もまあまあ丁寧。だけど元パティシエで転生したっていうならそれを活かした見せ場、少なくともその片鱗を見せるシーンが第1話にはあってしかるべき。林檎選んだだけじゃなあ。順を追うのも大事だけど、1クール12話を視聴させるにはつかみに引きが必要。

★★

9 夢見る男子は現実主義者

実況民も騒然の冒頭のサッカーボール演出、本当になんなの? 原作の知識がないので本当に何かの異能力に目覚める系かと思っちゃったんだけど、まあ伝え聞くところによれば原作にもあることはある場面らしいので、たぶんアニメに落とし込むのに苦慮したんだろうな。もともと意味がわかんないシーンにどう理屈を付けるかって考えた結果ああなったんだとは思う。ただ、演出って観客が物語やキャラクターをどう理解すればいいかっていう筋道を作るものであって、意図を説明しないと伝わらない(たぶんこれは聞いてもわからないけど)ものは演出とは言えないと思う。

10 好きな子がめがねを忘れた

映像的な実験は専門学校の課題でやってくれないか? しかも大して上手くいってないし。机と椅子の間をカメラが引いてくる演出に何の意味があるんだよ。お前らの自己満足に付き合わされた原作者が可哀想だわ。アヴァンの小村くんのモノローグですでにわかってしまうくらい原作に対する作品理解という意味でも最低の部類。クソofクソ。

……原作が好きだから言葉が汚くなってすまん。でも偽らざる気持ちではある。せめて普通にやってほしかった。

11 自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う

奇抜な設定も飲み込みが早い主人公が先回りして解説してくれるからわかりやすい。こまごまとした謎は提示しつつも、基本のテイストはイージーゴーイングなお気楽ごくらくハッピー異世界生活って感じで悪くない。

★★★★

12 わたしの幸せな結婚

バリバリの家父長制の下で虐げられる主人公の女、いまどきちょっと珍しいくらいのほとんどギャグの域にまで達してる辛気くささなので逆に笑っちゃった。特に母親の思い出の桜の木が伐られた切り株の前に土砂降りの雨の中で佇んでいるところに、義妹に寝取られた役に立たねえ気弱ボンボンが来るところとか、どんだけ重ねんだよみたいな過剰な不幸演出で最高。直接的な暴力とかじゃないのがチクチク来るのがいいんだよね。よく理解ってる。その義妹(後妻の子)役が佐倉綾音で、本当に生き生きと姉虐しててそれも最高! 前クールの『BIRDIE WING』2期とかもそうだったけど、大映ドラマ観て育った世代が作る側に回ってるっていう感はあるな。

しかも、原作知識がないからついWikipediaを見てしまう悪い癖を発動させてしまったんだけど、この世界って単に擬似大正チックなものじゃなくて、あやかし的なものが跋扈する世界なのね。初回の段階でそんなのわかんないじゃん、何それ気になる! ってなったので継続。

★★★★

13 アンデッドガール・マーダーファルス

幕末~明治維新期とか、逆に大正年間とかは和風レトロな作品ではよくある時代設定だけど、明治30年代を舞台にするのは珍しい気がする。その時代感を川上音二郎のオッペケペー節で出してくるのかって少し笑った。まあ時代がかった男女バディものって考えると前クールの『地獄楽』と同様の枠だけど、こっちのほうがよりオサレ度が強いかな。これも女子が好きそう。

★★★

14 呪術廻戦「懐玉・玉折/渋谷事変」(第2期)

卑怯っちゃ卑怯だよね。本線の時間軸の中ではそれなりの立場にある大人たちの若い頃を描いたプリクエル、面白くないわけがないので。まあつかみはOKで、今期はあくまで渋谷事変が本番ではある。

★★★★

15 悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。

ジェネリックはめふら以上の感想が持てなかった。このタイプの話はもうはめふらが基準を作ってしまったのが不幸といえば不幸。

★★

16 七つの魔剣が支配する

どうしても原作者が借金玉の弟っていう豆知識のほうが先に来てしまうけど、それはそれとして以前アニメ化された作品もそうだったように、スタートダッシュに不向きな作風のような気はする。読んだことないからアニメからの推測でしかないけど。2作品とも良くも悪くも出だしは「普通」なんだよね。でもそれはせっかくアニメ化するのであれば構成と演出で補ってあげてほしいかな。

★★★

17 スプリガン

すでにNetflixで視聴済みではあるのだけれど、あれは各45分の6話構成だったのでそれを12話1クールに分割したものは別のものとして評価。まあおそらく最初からそれは織り込み済みで、うまく割れるように構成してあるはずだとは思うし、初回もそつなくまとまっていたと思う。

★★★★

18 AIの遺電子

うーん、なんか原作は売れてるんだよね? あんまりピンとは来ないというか、正直昔からよくあるAIとかヒューマノイドが普及した社会で真の人間性とは何かを問うみたいなやつかなとは思いつつ、そこでやってるのはわりとベタな人情話なのでBJチックでもあって、全体的にやっぱりクラシックな味わい。悪くはないけどね。

★★★

19 デキる猫は今日も憂鬱

これもGoHandsで好きめがと同じ監督か。ごめんこっちは別に原作も知らないから本当にアヴァンでギブアップ。だって情報量ゼロじゃん。TVアニメの第1話としてあり得ない。真面目にやれ。真面目にやってこれなら端から能力がないか、ちゃんとした作り方を教わっていないかどっちか。

20 レベル1だけどユニークスキルで最強です

これもまあ一見最弱だけど本当は最強でしたテンプレだなあ。そこに頭の弱い女絡ませればいいでしょみたいな安直さにはもう飽きた。もうわかってるからひとひねりほしいよね。

★★

21 ライアー・ライアー

えっと、まずさあ、同名のジム・キャリーの映画もあるし、国内でも『ライアー×ライアー』っていう漫画があるし(これも映画化された)、混同してしまうからタイトル変えない? こういうのもそうだし、CとかKとかアルファベット1文字のタイトルとかもそうなんだけどさ、検索性はバカにできんよ? 出来としてはまあまあだけど、そんなに興味はないかな。

★★★

22 てんぷる

『ぐらんぶる』作者の最新作アニメ化だけに、ノリとテンションで突っ走るギャグ成分強めでラッキースケベもマシマシでお送りするシチュエーションラブコメ、っていう基本線がすんなり飲み込めた。女の子たちのキャラがちょっと弱いかなっていうのが気になるけど、それも2話以降の掘り下げ次第かな。監督は『夢見る男子は現実主義者』と同じだけどこっちのほうが本領かなという感じ。

★★★

23 ゾン100 ~ゾンビになるまでにしたい100のこと~

制作はOLMチーム児島あらためBUG FILMS、監督は川越一生、つまり『古見さんはコミュ症です。』のスタッフによる最新作。音響監督も兼任して第1話では絵コンテ・演出も自ら手綱を取ってフル回転の若き大エース川越一生渾身のエンターテイメント。構図も色彩もテンポも音響も決まりまくってて爽快。っていうかこれが日5であることにすごい意義があると思う。今期優勝候補ナンバーワンだな。

★★★★★

24 死神坊ちゃんと黒メイド 第2期

1期を観ていたファンに対するサービスもきっちりこなしつつ、細かいところはちょっと忘れてるよっていう人に対する説明も怠らない、2期1話のお手本みたいな作りは誠実そのもの。基本は王道のシチュエーションラブコメでありながら「触れることができない」という制約があるがゆえのプラトニックな寸止め感にドキドキしつつ、だからこそフェティッシュかつセクシャルな味付けが生きてくるっていう天才的な設定なんだけど、その坊ちゃんとアリスの微妙な距離感を絶妙にコントロールするアニメならではのレイアウトの妙が光る。

★★★★

25 英雄教室

このクドさ、すげえガンガンっぽいなと思ったら原作は集英社でコミカライズがガンガンだった。邪気がなさ過ぎてサイコパスっぽく見える主人公って少年漫画ではまあわりとよくあるんだけど、どこかでちゃんと人間味というか正味のところのモチベーションとか目指すべきものとか、つまり「リアルな感情」を見せないと絵空事のままで終わってしまう。出来としては可もなく不可もなく。

★★★

26 ダークギャザリング

なんかざーさん演じるこのいとこの姉ちゃん、ちょいちょい不穏な空気出してくるなと思ってたら最後に本性が出て怖あってなった。何なら本筋の心霊話より怖いんだが、もしかしてもともとそういう構造の話? 第1話としてはもろもろの説明にも過不足なくスピーディでよかったのでは。

★★★

27 SYNDUALITY Noir

滅び行く人類が文明の残滓を利用して独自の文化を形成してる近未来ポストアポカリプスで未知の少女型デバイス(?)とのボーイミーツガールって感じか。お前らこういうの好きだろ? 全部詰め込んでやったぜっていうメガ盛り丼。おう大好きだよ!

★★★★

28 Helck

佐藤竜雄のTVアニメ監督作ってずいぶん久しぶりじゃない? 『アトム ザ・ビギニング』以来? ギャグとシリアス(?)のコントラストも明快でサクサク進むテンポも軽快、原作の体裁もあって画面はちょいバタ臭くてnot精細、でもこれはこれで正解。

★★★

29 白聖女と黒牧師

なるほどそういうギャップ萌えを楽しむ系だったか。好きな人は好きそう。まあでもnot for meだな。

★★

30 はたらく魔王さま!! 2nd Season

長いブランクを経ての2期制作で期待は高かったものの、正直1st Seasonの評判は芳しくなかった本作。別に体制が変わったわけでもないんだけど、久しぶりすぎて手探りだった部分もだいぶこなれてきたのか、2期からの新キャラも含めて馴染んできて本来の味を取り戻した感がある。これが最初からできてればとも思うけど、立て直したことを称賛したい。

★★★

31 聖者無双 ~サラリーマン、異世界で生き残るために歩む道~

横浜アニメーションラボ×クラウドハーツは『冰剣の魔術師が世界を統べる』でも実績のある組み合わせで、一部界隈ではいまのアニメ界における裏エース的存在になりつつあると言っていい。(※『冰剣』では横浜アニメーションラボのクレジットは「アニメーション制作統括」)

主人公が現世っていうか元世で培ったサラリーマンスキルをわりと真っ当に活かそうとしてたりして、転生ものとしては比較的真面目な部類に入るのだけれど、それを肩肘張ってアピールするのでは全然なく、むしろちょっと間の抜けたキャラクターで緩和されていて、いい塩梅に力の抜けたスチャラカアニメ感とのマッチングがよい。こういう抜き差しの妙というか、やはり作品の選定段階から横浜アニラボ×クラハの目利きが発揮されているという気がする。アニメはエンターテイメントなのだから面白いことが第一であって、作画はガワに過ぎない。やれることを着実にこなして「面白くする」ことに注力する姿勢は侮れない。

★★★


〈補足〉

例によって例のごとく、前期以前で完走できなかった作品についてはもう第1話からスルーしている。観れば面白くなることもあるのはわかってるけど、そこまで面倒見きれない。タイトルとしては以下がそれに該当する。

ホリミヤ/もののがたり/政宗くんのリベンジ/シュガーアップル・フェアリーテイル/BLEACH/文豪ストレイドッグス/彼女、お借りします/スパイ教室 など

また、個人的にあまり興味が持てない作品もオミットしている。ここに含まれるのは以下。

るろうに剣心/百姓貴族/AYAKA -あやか- など

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