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こころしずかに


 ココロ静かに
 
 クリスマス・誕生日・仕事納め・大晦日…とバタバタしているうちに、ああ、とうとう年が明けてしまいました。2000年。SFの世界でしかお目にかかれないはずの年号だったのに、現実のものになってしまったなんて…あらまあびっくり。
 今年はおせちもお雑煮も門松も年賀状もおめでとうもなし。昨年3月に義父が亡くなったので、そういうことになりました。おかげで実に静かです。毎年の恒例行事で、年越しはわたしの実家で、手作りのそばをいただきながら…ということになっていたのですが、それもなし。自宅で、普段と同じように過ごすのも、なんだか、ほんわかとしていい感じ。

 さてミレニアムとは関係なく、わたしは予定日を約2週間後に控えた妊婦さんです。胎児は内側から、お腹をパコパコ蹴り飛ばし「もう、いつでも準備オッケーよ」状態。実に頼もしい限りなんですが、わたしの体調はイマイチ。特に不快なのは、手のむくみと、腰痛、それに股関節の痛み。
 特に起床時には、指が曲げられないほどぱんぱんに手が張っている。どうして、こんなに「むくみ」が出てしまったのか(むくみは妊娠中毒症の症状の一つだというので、ちょっと心配しながら)先日の検診で医者に聞いたら「うん、自然なことですよ」で、片づけられてしまいました。医者が言うには、出産時の大量の出血に備えて、いまから血の量を体が増やしているのだそう。血の量が増えると言っても、赤血球の量はそんなに増えない(どうせ流れる血なのだから、薄いのを流しちゃった方が得、ってことらしい)とのこと。わかったような、わからないような…でも納得。それに、この時期になれば、もういつ出産が始まってもおかしくないので、なんらかの異常が見つかったら、すぐ帝王切開に切り替えればオッケー、らしい。「それが今の医療なんですよ」と医者は言っていたっけ。
(わたしは第一子を帝王切開で出産しているので、今回もそうなる可能性は高い。一応、自然分娩を希望しているのだけど…どう転ぶか「その時」になるまで、誰にもわからない…怖いなあ)。
 腰痛は、巨大な腹を抱えて、無理な姿勢になっていることからくるもの。
 胎児の体重はすでに3㎏近くあり、そのまわりに胎盤やら羊水やらのオプションが、これもまた約3㎏。計6㎏を腹部につねに抱えているわけで…そりゃ、重いです。もともと背筋だってそんなに強くないですから、この時期、どうしてもすこし反り身になって、腰に負担がかかるというわけ。ちなみに、妊娠時の体重は、いくらでも増加していい、というモノではなく、太り気味の人なら、胎児3㎏+オプション3㎏+おっぱいの分1㎏で7㎏くらいまでに押さえておいたほうがよいとのこと。わたしのように、まあ標準体型の場合でも10㎏以上増加すると、お産もきつくなるし、なにより産後の体型が戻りにくいので気をつけなくちゃいけません。
 難物なのは股関節の痛み。
 これはね、もう、切ないです。姿勢を変えたとき、たとえば、就寝時、寝返りを打とうとすると、股がキリキリ痛みます。股の骨です。「いっててててて!」って思わず声が出るくらい、痛いですぅ。たとえて言うと、麻酔きかない状態で歯を抜くくらい痛いです。この痛みにも原因があって、いざ出産、というときには、子宮の入り口(出口ともいう?)が直径15㎝くらいまで開きますが、いっきにそこまで開くわけではなく、ゆっくり、何週間かかけて準備しながら開いているわけで…ゆるゆると骨が動いているのだから、痛くないわけがない…。骨が動く、怖いですね。人の体ってホラーだなあ、と今更ながらに面白かったりします。
 あ、そうそう、消化器官が胎児で圧迫されますから、便秘→脱肛→痔というコースをたどる人が多いそうです。わたしも悲しいことに第二段階までいきました。でもこれは、妊娠だけが原因の場合、割と簡単に直るそうです。

 ついでに精神的にはどうか、というと、はっきりいって不安定です。不安定ですが、表面的な部分のみ不安定というか…水面と海底との流れが違うという感じ。すぐ泣いたり、怒ったり、人に当たったりする割に、ココロの下の方は、いつもよりスーッと静か。そう思いながら鏡を見ると(もともとわたしは、どっちかっていうと「大人しそう」な顔をしているのですが)草食動物みたいな表情になっている。弱そうなんだけど、打たれ強そうな。

 妊娠してからこっち、わたしは何のために、新しいイノチを生み出そうとしているのかな…って、ずっと考えていた。特に年末、ショッキングな事件が社会を騒がせたりして、考えざるを得なかった。んー、でも、考えても、考えてもわからない。妊娠のせいで思考力が低下しているのもあるけど…。そもそもわたしだって「なんのために」生まれて生きてきたか、わかんない。わかんない。
 考えているうちに「…のために」なんていうイノチの存在の仕方を考えること自体、良くないなあと思うようになった。武士は「お家のため」、軍人は「お国のため」…どっちも死ぬための大義名分でしかない。恋人は「あなたのため」、ハハオヤは「子供のため」…それは変形したエゴでしょう。
 目的はわからないのだけど、実際、子供は産まれてくる。じゃあ、わからないのね、と考えることを自分の中から突き放してしまう。


20年くらい前の日記です。もう書けない感情。
長女は現在2019年22歳で就職が内定しました。次女は高校を卒業してコンピュータ系に就職、その頃影も形もなかった三女と猫がいまうちにいます。(2019/10/5)

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