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休職211日目 ×××みたいな奴ばかりだろ

最初の大学四年生の時(留年してるからね)、就活でソフトオンデマンドに面接に行ったことがある。
ソフトオンデマンドとは、男なら誰でも知っているアダルトビデオの流通、制作を行う会社。

このロゴは男なら誰でも見たことがあると思う。
当時、俺はAVショップでバイトしていて、本当にAVが好きだったので、AVに関わる仕事がしたいと本気で考えていた。
ソフトオンデマンドは中野にけっこう立派な本社ビルが建っていて、説明会もきちんとしていた。「作品の中では犯罪行為も出てきますが、当然、私たちは犯罪者ではありません。あくまでもフィクション、ファンタジーです。フィクションと現実の区別がつかない方は今すぐ退室してください」というようなことを説明会の始めに告げていた。
女性社員もいて(けっこう美人だったと思う)、作品のパッケージデザインなど、技術を向上させるために日々勉強が必要だ、というような話をしていた。
制作部からは、家賃を全額補助するので、会社の近所にアパートを借りてもらう、という話があった。何でも、電車のある時間にはまず帰れないので、という理由だった。
良いところも悪いところもしっかり説明する会社で、好感が持てた。
俺は面接を二回パスし、最終面接まで進むことになった。親にそのことを話すと、あまり良い顔はされなかった。表立って反対はしないけれど、出来ればそんな会社には就職してほしくない、と思っていたようで、父親には「そんなビデオを作ってる会社なんてヤクザみたいな奴ばかりだろ」と言われ、母親には「よく考えて決めないとダメよ」と言われた。
今となれば、両親の気持ちは分かる。世間体もあるし、何より俺を心配してくれていたのだろう。しかし、当時の俺は、「やめろ」と言われれば言われるほど、うるせーよ、と思ってしまった。俺の人生なんだから俺のやることを応援してくれるのが親だろ!と。
けれど、良くも悪くも、俺は最終面接で落ちてしまった。というのも、一緒に面接した就活生たちのキャラクターがめちゃくちゃ濃かったのだ。
その中のひとりの女の子は、「私は小さい頃からエッチなことが大好きで、こっそりそういうビデオを観たり本を読んでいました。でも、女の子がエッチなことを好きで何が悪いのかと思うようになりました。もっと私と同じ気持ちの女の子の力になりたいと思い、御社への就職を希望しました」というようなことを言っていた。なんて立派なんだ、と思った。
今では、女優の水原希子がセルフプレジャーアイテムのIrohaとコラボしてプロデュースしたり、TENGAストアにも普通に女性店員がいたりして、女性の性に関してだいぶ「恥ずかしいもの、隠さなければいけないもの」という認識がようやく少しずつ変わってきている。当時の最終面接のその女の子はかなり勇気があったんだろうな、と思う。

結局、俺はソフトオンデマンドには就職せず、とある中小企業に内定をもらった。給料が安い会社だったので、親は心配していたけれど、何も言わなかった。まぁ、留年したせいでその会社で働くことはなかったけれど。

今、働いている会社には新卒で入社してかれこれ15年くらいになる。いつかSNSで炎上してヤバイことにならないだろうか、と常に思っている。叩けばホコリはいくらでも出るだろうし。俺が休職している間に何か変わっただろうか?いや、ありえないな。

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