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闇夜の黒猫(短編小説)

 夏は終わったが秋とは言い難い、そんな季節の午後八時。
 私は列車に揺られて家路についていた。
 闇夜を切り裂くように進んでいく快速列車は、街の人々の暮らしを垣間見ながら人々をそれぞれの家に連れ帰る。
 しばらく列車に揺られていると、自宅の最寄り駅に着いていた。
 列車を降りて改札を抜けると、駅前に何かいる。よく観察すると、どうやら黒猫のようだ。烏羽色の艷やかな毛並みと、満月のような金色の瞳。夕焼けのような茜色の首輪をしているので、どうやら飼い猫のようだ。
 少し気になったので近づいてみる。
 やはり何度見ても美しいと思う。
 そっと手を伸ばし、毛並みに触れてみる。
 猫は嫌がる素振りも見せず、嬉しそうに目を細めた。
 しばらく猫と戯れたあと、私は家に帰った。
 また、会えるかな。
 そんなことを思いながら、私は家のドアを開けた。

 
 

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