Photo by syuka_sakura オープンダイアローグ(Open Dialogue)とは 7 Soc 2024年11月3日 11:50 「オープンダイアローグとは、1980年代にフィンランド・西ラップランド地方にあるケロプダス病院精神科で開発・実践されてきた、主に発症初期の統合失調症患者への治療的介入の手法です。実践のためのシステムやケアの思想も含まれます。」「オープンダイアローグを導入した西ラップランド地方の報告(導入2年後の予後調査)では、統合失調症患者の入院治療期間が平均19日間に短縮され、抗精神薬が必要とされた事例は全体の35%(伝統的治療の場合は100%)になりました。さらに、2年後の再発率は24%(伝統的治療71%)、障害者手帳を受給している患者は23%(伝統的治療57%)と目覚ましい成果を上げています[注1]。薬をほとんど使わず、対話の実践だけで統合失調症を回復に導くというオープンダイアローグの登場は、精神医療の世界に大きな衝撃を与えました。今では、様々な国に広がり、イギリス、デンマーク、ドイツなどでは、オープンダイアローグが公的なメンタルヘルスサービスに組み込まれつつあります。」[注1]Seikkula, J., Olson, M. E. : The OPD approach to acute psychosis : Its poetics and micropolitics. Family Process, 2003;42(3):403-18.NIKKEI STYLE(健康・医療)2021年11月1日 3:00https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXZQOUC26APY0W1A021C2000000/「かつての医学心理教育では、統合失調症患者の異常体験を聞くと病状が悪化するから聞いてはならない、と指導されていました。禁じ手とされていたことをあえて行うことで、なぜか患者の症状が改善されていくという治療的介入手法が、オープンダイアローグ(Open Dialogue:OD)です。単に手法というばかりでなく、実践のためのシステムや思想を指す言葉でもあります」と筑波大学医学医療系保健医療学域社会精神保健学の斎藤環教授は説明する。Open Dialogueとは「開かれた対話」を意味する。この「対話」は、診察室で医師と患者が行う「会話」とは異なり、患者とその家族や友人、精神科医だけでなく臨床心理士や看護師といった関係者が1カ所に集まり、チームで繰り返し「対話」を重ねていくというものだ。斎藤教授は現地のケロプダス病院でその理念を学び、我が国の精神医療での普及を目指す「オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)」の共同代表も務めている。 「ODを解説した翻訳書や専門書は、異例と言えるほど多くの人に読まれており、大学の研究者などのアカデミア、精神科医を含む多くの医療関係者が強い関心を向けてくれています。ODNJPでは専門家向けのトレーニングコースを設けていますが、毎年定員40名のところ、2倍を上回る応募があるのが現状です。日本での関心の高さは、世界の中でも例外的だという実感があります」と斎藤教授は言う。 我が国でODに対する注目が急速に高まっている理由として、斎藤教授は「日本の精神医療の行き詰まりへのカウンターとしての期待が集まっているのでは」と分析する。その行き詰まりとは何か。構造的な問題として、「日本の精神医療には入院治療中心主義と薬物治療至上主義がある」と言う。 「うつ病でも統合失調症でも、この検査データがこうなったら確実にその病気、というバイオマーカーは発見されていません。しかし、病因を脳に還元し、社会とのつながりは軽視されがちです。心ある精神科医もいるものの、多くは薬物治療のみを重視し、『薬を飲みたくないなら治療はできません』という医師すらいます。また、日本は世界の中で最も多い33万床という桁外れの入院病床数[2]があり、さほど必要のない人まで入院治療認定されているという状況があります。入院治療では隔離や身体拘束など人権が侵害されるような劣悪な環境が起こりがちです。国民にも『頭のおかしい奴とは共存したくない、病院に入れてしまえ』という発想があります。一方、世界全体では、精神疾患があっても地域や自宅で暮らしていけるようにという流れがあり、日本は真逆の方向性にある。つまり日本の精神医療は、先進国の中で最も遅れた体制にあると言わざるを得ないのが現状です」 斎藤教授は現在、勤務する大学病院やクリニックでODの治験を行っている。「30年以上、精神医療に携わり、うち20年以上、入院病棟を経験してきました。薬やカウンセリング的な方法での治療は長く経験を重ねてきましたが、治しきったという実感は持てないでいました。しかし、ODによって薬なしで患者の妄想や幻聴を取り除くことができるという経験をし、初めて、自分の手できちんと治療ができたという実感があり、本来はこれが医師の仕事であろうと感じました。チームに加わる看護師などの医療スタッフも、治療に直に関わることができる充実感が大きいと話しています」と斎藤教授は言う。[2]OECD Health Statistics 2021 WHOがグッドプラクティスと認める「オープンダイアローグ」は、日本の精神医療を変えるか?新しい精神ケア手法「オープンダイアローグ(開かれた対話)」の実力(前編)取材・文/柳本 操 2021.10.1https://project.nikkeibp.co.jp/behealth/atcl/feature/00003/091500233/?P=3先の引用にあった団体、オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)の2024年度総会記念イベントでは、ODの先進地フィンランドの実例を発表している。「フィンランド/西ラップランド: ダイアローグ実践と精神医療の現在」第一部 フィンランド・ダイアローグ訪問研修に参加して今年の3月中旬、2つのグループ合同で、8日間+αのスケジュールで、フィンランドのいくつかのダイアローグ関連施設、機関を訪問し、現場の実践者から学ぶという研修に参加してきました。訪れたのは、西ラップランドのケミ、ロヴァニエミ、そして首都のヘルシンキと東部のコトカですが、オープンダイアローグに限定せず、アンティペーションダイアローグ、(支援者のための)ダイアロジカル・スーパーヴィジョン、子供との日常的ダイアローグ、そしてクライシスセンターのダイアロジカルな活動についてなど、多様な(ポリフォニックな)ダイアローグ実践について、各地のスタッフとのダイアローグを通して多くを知り、学ぶことが出来ました。今回は特に、メンタルヘルス・フィンランドとクライシスセンターのことを中心に、奈良のダイアローググループのメンバーから報告をしてもらいます。この研修に同行された当事者、家族の方からも、フィンランドのダイアローグの文化、制度、現場での取り組み触れてみての感想について話してもらう予定です。コーディネーター:植村太郎、白木孝二登壇者:岡本響子、森田真規子、式部和也、桑原由香」第二部 西ラップランドの現在オープンダイアローグの開発の拠点となってきたトルニオのケロプダス病院が1昨年秋に閉院し、昨年1月には西ラップランド医療区がラップランド福祉サービス郡に統合されるなど、西ラップランドの精神医療体制は、今大きな変化を経験しています。西ラップランドの精神科医であり、オープンダイアローグのトレーナーとして、日本を含む多くの国でのトレーニングの経験があるカリ・ヴァルタネンさんに西ラップランドの現状をお話しいただき、西ラップランドの現状とオープンダイアローグの今後について考えます。登壇者:Kari Valtanen(カリ・ヴァルタネン)、石原孝二、斎藤環、高木俊介(フィンランド語通訳:森下圭子)オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)https://www.opendialogue.jp/%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/%E4%B8%BB%E5%82%AC%E3%82%A4%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%88/ ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #日本 #オープンダイアローグ #精神医療 #ラップランド 7