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福祉から平和を(16)プリズン・サークルを観て

ブレイディみかこさんの著書「他人の靴を履く 〜アナーキック・エンパシーのすすめ〜」で取り上げられていた映画。

この映画を2021年12月に自主上映した。4日間で314人の来場があった。多くの人と共有したいと思っていただけに、この数字はとても嬉しい。手弁当で助けてくれた仲間たちに心から感謝する。

その映画を一番初めに見たのが同年9月、CINEMA Chupki TABATAで鑑賞した。その直後に記した感想を、いま共有させていただく。

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舞台は島根あさひ社会復帰促進センター。受刑者が車座となった場で、社会復帰調整官を始めとする福祉専門員が伴走しながら、各々の幼少期や犯行時の心境を振り返る作業が繰り広げられる。

受刑者は、犯行時の自分の感情を言語化するなどのプログラムを通して、自己の感情に向き合う。受刑者どうしのロールプレイングでは、自身の被害者を演じる他の受刑者を通して他者の心境を知る。他者を通して自己の感情を知り、自己を獲得することに成功した事例が生々しく紹介されていた。

彼らが素直な気持ちで言葉を紡ぐことができたのは、ゆっくりと進行する心理的安全性が高い場だからだ。急かさない、審判的にならないは、支援の基本だが、大勢が集う場で実現させるのは高度な技術と経験が必要だ。

全国に受刑者は約4万人いて、このプログラムの定員は40名。数で比較するとプログラムの定員が圧倒的に少なく感じるが、受講できる割合はそんなに高くないだろう。受刑者の彼らは言語表現能力が高く、自分の気持ちを持っていた。

受刑者の受講機会を高めることも大事だが、実は、このプログラムが相応しい人は触法者に限らないと思っている。

大なり小なり幼少期の環境、特に親の厳しい態度が自分自身に傷を残していて、それが本人も自覚しない心理的外傷(本当の意味のトラウマ)として残ることもあるだろう。さらにその生育歴で他者の感情に従ってばかり(他人の靴を履いてばかり)で、自己を獲得できない(自分の靴を履けない)こともあるだろう。そうして望まない形で今の自己(自分の嫌いな性格)を形成していることも多いと思う。

そういう意味では、こうした車座でゆっくりと言葉を紡ぐ場はもっとあっても良い。触法の有無どころか障害の有無も年齢も問わない。他者を知り、自己を知る場が社会に足りない。

豊かな精神社会に必要なサービスの1つだと思う。



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