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真相を究明する仕事

元監察医の上野正彦先生の著書2冊を並行して読んでいます。

医師にも、患者の苦しみを治す医師、新たな生命を授かる医師など色々あれど、監察医は最も馴染みのない医師でしょう。平穏に生活する人と死体解剖する医師との接点はありません。

終戦直後の東京には街のあちこちに死体が転がっていたそうです。そんな街を巡回する警察官と医師は、痩せ細った死体を目視して「餓死」と決めつけていたようです。このように解剖もしない死因特定を知ったGHQは監察医制度を設置して、改めて監察医が診ると実は「餓死」ではなく「肺結核」が多かったことが判明。戦後の公衆衛生と長寿は、死体解剖によって真実が明らかになったおかげです。

監察医の本分は公衆衛生の向上。なので上野先生が属した東京都監察医務院は都衛生局に属します。

死体解剖というと「司法解剖」の印象がありますが、司法解剖は刑事事件の捜査の一環なので、通常は裁判所が大学の法医学教室に嘱託するそうです。但し、都監察医務院は例外で所属監察医は司法解剖も仕事のうち。上野先生は、監察医の中でも司法解剖に携わる稀有けうな職務に長年携わった方でした。

上野先生の著書を読むと「真相を知ることの重要さ」と「如何に真相が知られない不遇が多いこと」を知らされます。たまたまタイトルと帯に興味が湧いて手に入れた本だったけれど、監察医の著書に辿り着いたのは、自分の経験に基づく必然だったような気がします。

かつて私は製造業の品質保証部門に属し、返品機の原因究明に携わっていました。実機を通して真相究明し、再発防止に役立てる。そうして品質を高める仕事は、消費者を代弁する仕事だと誇りをもっていました。

監察医の場合、言葉を発しない死者の代わりに真相を明るみに出す仕事。その仕事が公衆衛生を向上させたり、犯罪の真相究明に役立ってます。その務めはまるで死者を代弁する仕事。とても私の経験と通じます。

障害福祉は、生きづらさを感じる障害者の未来を明るくする仕事。感情の言語化が難儀な当事者が居て、取り巻く社会システムは相変わらず改善の余地あり。その対策を試行錯誤する現在の仕事を私は大変誇りに思っています。

このように、メーカーの品質保証から障害者福祉にシフトした自分が、監察医の言葉に響くのは、真相究明で社会貢献する同士だから当然なのでした。

品質保証では消費者を代弁して、開発や工場に是正を求めました。そうして製品の品質を高めて、社会を住みよくしています。

監察医は死者を代弁して、医学研究や司法に是正を求めました。そうして医療や公衆衛生を向上させて、社会を住みよくしています。

同じように、障害福祉も障害者を代弁して、精神医療や自治体や企業に提案すれば良い。現場の臨床結果が精神保健の専門性を民生化する。それが実質的に社会を住みよくする。そう信じてるのです。

真相は身も蓋もなく、不都合な人も居るかもしれないけれど、現実を直視できる成熟社会を次世代に引き継ぎたい。嘘や欺瞞でじゃれる幼さはダサい。

今後も、言葉を発せない弱者の味方として出来ることをするでしょう。

ところで.…国葬(と言われる儀式)本当にやるのかしら?

権力者の不当な手続きを有権者が好みで許してしまうと、国民が自ら、権力者が国民の自由を奪うような社会に寄せてしまいます。こちらの動画はそれをわかりやすく解説してくれました。
過激な物言いは社会の分断を助長するから、大人げない表現には眉をひそめますが、今後の熟議に役立つ観点ですので冷静に御覧ください。


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