世界でスクールソーシャルワークってどうとらえられているのかな。

暫くスクールソーシャルワークに関わってきて、「おや?」と思うこともあるのですが、個人的な感想をお話する前に、世界のスクールソーシャルワークに目を向けて、紹介してみたいと思います。

スクールソーシャルワークの国際ネットワークというところが、2022年2月に「A Global Picture of School Social Work in 2021」という文書を発行しているので、今日はそこに書かれている内容から少しご紹介しますね。
(私の意訳的な部分もあります点、ご了承ください)

(1)スクールソーシャルワークの必要性

1948年に国連総会で「世界人権宣言」が採択され、1990年の教育に関わる国際会議において、「教育の権利に関わる記述」が強化されました。
「持続可能な開発に関わる教育のゴール」について、新興国では初期的な課題となっていますが、先進諸国でも、教育へのアクセスを等しく確保することは重要課題となっています。特に、社会的に取り残されたグループの子ども達、例えば、障害のある生徒、少数民族、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランス/インターセックス等の教育から取り残されがちなグループが存在していることが指摘されています。

その後、2006年の障害者の権利に関わる国連憲章では、24条で「各国は全てのレベルにおいて包摂的な教育システムを確保せねばならない」ことが示され、各国でも「包摂」を意識した取組が行われるようになりました。

2020年のグローバル教育監視(GEM)報告「包摂と教育」でも、『包摂的で等しい品質の教育確保』は、貧困、人種グループや障害児を含む、全ての取り残されたグループに焦点を当てたものであることが示され、包摂の課題の複雑性が指摘されています。

また、急速な社会の変化は、以下のように様々なレベルで障壁を生じ、子どもの学校教育を妨げていることを示しています。

  • 「個人的なレベルの障壁」⇒身体的・精神的な健康の問題、薬物乱用、10代の妊娠等

  • 「家族レベルの障壁」⇒DV・貧困・離婚・子どもの虐待、ホームレス等

  • 「システム的な障壁」⇒不適切な教育、ファシリティの乏しさ、授業マネジメントの非効率、いじめや偏見等

こうした問題は世界で類似して発生し、子ども達の学びを阻害し、不登校・成績不良・行動の問題やドロップアウト等を生じています。

こうした状況を受けて、『学校』も、新たな課題に合致するように変わらねばならない状況にあり、教員とともに専門家の学際的なチームが活動することの必要性が高まっていることが示されています。
例えば、「学校養護」は、生徒の摂食障害やAIDS、がん等の医療的な問題を支援するし、「心理師」は学習面の課題を評価するとされています。
その中で「ソーシャルワーカー」については、『システム理論の広範な観点から生徒の生活のあらゆる側面を評価して、学習に介入し、そして、学校における成功を促進する複数支援を行う計画をたてる』と役割として記載されており、最小限の場合でも、「スクールソーシャルワーカー」は、『生徒、教員、親、そして、進化を最大化するために、その他、学校内やコミュニティ内における支援的な人々やプログラム等を探し出す』と示されています。

・・・、スクールソーシャルワーカーの役割については、以下の項で、もう少し説明しますね。

(2) スクールソーシャルワークの役割

スクールソーシャルワークは、「広く貧困や児童労働が学校への未就学に影響している国々」では、学校給食や子供の就学維持などの基本的なニーズを提供して家族にリーチすること等によって、教育を受けられるように機能しています。
一方で、「義務教育を無償で受けることができ、労働のために就学を妨げられることの無い国々」でも、ソーシャルワーカーの専門性を必要とする多くの問題が存在しています。例えば、不登校、学校恐怖症、中退等、通学に関わる問題の他、家庭の経済面や、政治的圧迫等、学校システムが有するニーズにも対応しています。理想的なスクールソーシャルワーカーの役割は広範で柔軟なものであり、スクールソーシャルワーカーは、課題解決のため、システムアプローチを活用して、学校、家族、コミュニティと取り組んでいくことになります。

また、学校は、「学習を妨げる問題」を解決することを課されているだけではなくて、例えば、子ども虐待、いじめ(サイバーのいじめを含む)、薬物乱用、10代の妊娠、およびあらゆる種類の差別といった、多様な社会的、健康的問題を扱うための予防的プログラムを開発することも求められています。多文化社会における生徒の生活を満たすためには、文化的配慮や、コミュニケーションスキル、意思決定倫理、そして、対立マネジメント等にも対応していく必要が生じています。
ソーシャルワークの役割は、こうした活動のプログラム開発にも合致するものですが、実践においては、限られた時間をこれらの予防に使いながら、緊急的な問題解決に重きをおいてきた傾向があります。
ソーシャルワーカーにとって、「介入」と「予防活動」のバランスをとるために、その『役割定義』を管理し続けること、そしてその方針策定に関与することは重要なものと考えられています。


スクールソーシャルワーカーの取組は米国の訪問教師に端を発したことは皆さんご存知の通りと思いますが、今では、先進諸国の多くの国々でスクールソーシャルワーカーが活躍しています(新興国等では導入が進んでいたりいなかったりです)。国によって重きをおいていることや取組にも差異がありそうですが、共通することも少なくなさそうです。
また資格の在り方もそれぞれありそうですが、そんなこんなは、また今度お話させてください。

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