(メモ追補版)DSA(アメリカ民主社会主義者)の分派

アメリカ民主社会主義者(Democratic Socialists of America, 以下DSAと略)にはいくつかの分派が大ぴらに存在している。組織としては確立していないが、DSA全体の執行機関である全国政治委員会(National Political Committee = NPC、大会の選挙で選ばれた18名で構成)の選挙におけるグループという形のものも存在するようだ。実際には諸傾向の均衡がとれたNPCが構成されているようである。
以下、その分派について紹介していきたい。

Groundworks

DSAのNPCに6名を当選(2023年)させた。恒常的な分派ではなく、NPC選挙のために比較的右派的な人々が集まった塊と言えそうである。
主張としては、大衆的な労働者政党を目指し、社会主義労働運動を目指すとしている。実際の大会での決議案への修正案を見ると、既存大組合との協調や既に民主党議員として活動している部分の擁護といった特徴があり、DSA内で右派と見なされている。

Bread and Roses (パンと薔薇)

DSA中最大の分派であり、DSAのNPCで3名(2023年)を得ている。自らをマルクス主義者の集まりとしており、DSAを多人種の労働者に根ざして強化する、としている。また、トランプ主義を敗退させ、戦闘的左翼かつ民主的労働運動の再建、医療皆保険、グリーンニューディールを勝ち取ること、全ての被抑圧人民の平等と解放のために闘い、民主党による進歩的政策に対する背後からの抑えつけを終わらせる、とする。
さらに詳しくは"Where We Stand"を参考いただきたい。また、インターネットラジオ(podcast)"the CALL"を運営している。

Socialist Majority Caucus (社会主義多数派)

この分派からもNPCに2人選出(2023年)されており、NYのような鍵となる地方本部(チャプター)で影響力を持っている。もっとも喫緊の課題は社会主義多数派を形成することであるとし、DSAが他の進歩的団体と共闘することにも積極的であるようだ。Transformative Reform (構造改革?)に力点を置いているように見受けられる。

Marxist Unity Group(マルクス主義団結グループ)

NPCに2人選出(2023年)されている。アメリカの社会主義運動にかけているのはマルクス主義に立った政党だとする。マルクス、エンゲルス、カウツキー、レーニンの文献を重視する。

Libertarian Socialist Caucus (リベタリアン社会主義)

「DSAが複数の傾向を持つ社会主義大衆組織であることを評価し、DSA内に国家を超えた社会主義について議論し、組織する余地を作っていきたい」「社会主義の原則である生産手段の共有化は、労働者所有企業、ラジカルな労働組合、労働者と地域の委員会、住民会議、信用組合や現在とは違う銀行システム、コミュニティの土地トラスト、その他の直接民主主義的な組織によってのみ達成できると信じる」
また社会主義政党や社会主義政権はこれらの分権的な草の根組織より下位に置かれるべきである、としている。

Reform and Revolution(改革と革命)

この分派はマルクス主義を標榜している。経済的不平等、人種差別、性差別、あらゆる種類の抑圧と闘う、としている。分派の役割をDSAを労働者階級や被抑圧者の闘いに根ざした大衆政党にすることである、とする。DSAを党的な組織にするとの主張が強い。

Green New Deal Slate(グリーン・ニューディール)

この分派もNPCに3人選出(2021年)されたことがある。2023年大会では選出されていない。
Workers And The World Unite!を標語とし、環境問題が21世紀の社会主義のキーとなるとする。主に環境社会主義を基調としている。DSAを政党的なものに建設するという路線のようであるが、組織というよりも全国委員会選挙のためのグループということのようだ。

DSA Renewal (DSA 改革)

NPC選挙のためのグループで、NPCには2名選出(2021年)されたことがあるが、2023年には選出されていない。労働者階級に深く根ざした大衆組織を建設するとしている。反帝国主義、意識的な組織拡大、民主的な構造と組織、戦略的なキャンペーンによって、DSAを労働者階級の力の手段に転換する、としている。

DSA自体については
(ノート)アメリカ民主的社会主義者(DSA)について


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