(メモ)交易条件指数の低下をどうみるべきか

日本の貿易における交易条件指数=輸出物価指数/輸入物価指数がかなり低位にとどまっている。これは日本の国民経済として、製造業を中心にした加工貿易で稼ぐというモデルがうまくいかなくなる条件になる。しかし、貿易が大きく不利になっているかというとそうではないかもしれない。
まずは交易条件指数の時系列変化を見てみよう。

1980年代半ばに原油価格の大幅低下によって、日本の交易条件は大きく上昇した。逆に2002年以降は、米イラク戦争を機に、原油価格が上昇したことによって交易条件は悪化している。為替変動は輸出価格も輸入価格も同方向に変動させるわけで、為替レート自体は、原理的にはあまり大きな交易条件への影響を持っていないはずだ。しかし実際には、交易条件指数が高かった時期の多くは円高期であり、低くなってからは円安期でもある。これは、原油などの資源をはじめ輸入品の多くが国際価格であるのに対して輸出品の価格は国内価格に連動していることが多いことが原因であるかもしれない。

現在、日本が比較的競争力を維持できている輸出製品は、自動車と半導体製造装置、ロボットなどの資本財である。これらは、円安になったからといって競争力が増して数量が出るという効果は小さいようだ。それよりも製品自体の技術的競争力が問題であり、半導体製造装置や半導体材料などでは日本企業は寡占的である。

現在、コロナ禍で中断しているが、外国からの観光という「輸出」は円安になれば数量は増加するだろうが、国内での消費は基本的に国内価格であり価格面でのメリットはない。

交易条件の悪化はむしろ日本の消費者の負担感を示している。最近の原油価格上昇による全般的なエネルギー価格の上昇は多くの勤労者の家計を直撃している。現在の円安は是正方向に転換させていくべきだろう。

(2022年2月20日 記)

(メモ)円安をどうみるか


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