(メモ)崩壊し始めた米国住宅バブル

米国の住宅価格はリーマンショック時の落ち込みから緩やかに回復していたが、コロナ・パンデミックをきっかけに大きく上昇した。住宅バブルと言える現象である。しかし、そのバブルもピークを超え崩壊し始めたようだ。


住宅価格がバブル的な上昇に至った要因は主に2つあると考えられる。
(1)コロナ・パンデミックによる不況に対応して米国金融政策が大規模な緩和に踏み切り、長期金利が大幅に低下したこと
(2)コロナ・パンデミックによる失業などの影響で賃貸住宅から追い出しを受けるのではないかという懸念が高まり、住宅取得の動機が生まれたこと
長期金利の下落は住宅ローンの借入による住宅所得を容易にし、賃貸料より低い月次のコストで住宅取得ができるという状況になったことが住宅購入需要を爆発させ、結果として住宅価格高騰につながった。そうした状況で投機的な購入が増加した可能性もある。特に西海岸における上昇は、もともと住宅の需給に逼迫感があるため激しいものだった。
3月からの連銀の金利引き上げにより住宅ローン金利も大きく上昇し、住宅価格も大きく高騰していたために、借りるより買った方が負担が小さいという状況は終わりを告げ、住宅価格は下がり始めている。
S&P Case-Schiller 指数(2000年1月=100)でみると20大都市の住宅価格は6月に316.17の後、7月に314.78に低下した。西海岸ではもっと大きな波が見られ、すでに5月がピークとなったようだ。シアトルでは5月に414.02となった後2ヶ月連続で低下して7月は393.78に低下、サンフランシスコでは5月に388.48のピークの後7月は370.58まで低下、ロスアンジェルスでは5月421.09の後7月413.70となっている。最近の不動産広告においても値下がりが目立っており、さらに低下していることは疑いがない。
住宅ローン金利は30年固定金利で、年初は3.11%だったものが現在は6.92%に上昇しており、同じ価格であれば総支払額がおおよそ50%増加する計算になる。裏を返せば住宅価格が2/3程度に下落しなければ同等の総支払額にならないということである。
これまでの住宅価格と賃貸料の関係から見ても30%以上の大きな下落は避けられないだろう。これがリーマンショックのような新たな金融恐慌を発生させるのかどうかはわからないが、変動金利で借りた層が支払いを滞らせたり住宅価格が頭金を下回ったりして、差し押さえが大量に発生する可能性がある。また、住宅の購入と賃貸のバランスから見て、賃貸料の方にも上昇圧力が働いてくるだろうと予想される。これも賃貸料を払えずに追い出される人が出てきてしまう要因になる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?