(メモ)労働者協同組合の可能性と限界

2020年、労働者協同組合法が施行され、労働者協同組合を非営利法人として簡便に設立することができることとなった、とされている。労働者協同組合法では、労働者協同組合は「組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織」と定義されている。

労働者協同組合が真に民主的に運営されれば、労働者の基本的な権利が守られ、職場でのハラスメントといった問題も大きく改善するかもしれない。働きがいといった点でも良い点はあるだろう。民主的な運営となるためには組合員の多数決原理が働くだけでなく、監査体制などチェック機能や組合員に対する経営の情報開示が不可欠である。労働者協同組合法ではこの点について一定の規定がされているが、民主的な運営体制を構築するためには組合自身、また組合団体自身による自主規制が必要なのではないだろうか。

労働者協同組合なら資本による搾取がなくなるということはない。つまり、疎外された労働がなくなるわけではない。資本主義においては、資本利潤率の均等化作用によって、使用資本の額が小さい分野だと価格は費やされた労働価値を下回ることになる。資本主義のもとでは資本額(ストック)に対する利潤率が均等化していくように資本移動が起こり、販売価格も変化していくからである。結局、その差分は周り回って大資本の利潤に転化してしまう。労働者が資本を出し合って行える規模の事業はそういう性格が強くなるのではないだろうか。直接、組合に搾取されるわけではないが、資本主義経済システムの中で間接的に搾取されてしまうことになるのである。この程度は行う事業の参入障壁の高低によっても変わってくる。

また生産手段の購入や運転資金を金融機関からの借入によって行えば、当然のことながら利子の支払いという形で金融資本による直接的な搾取があり、事務所をはじめ生産手段を賃貸(リース)すれば、賃貸料という形での他資本による直接的な搾取がある。

労働者協同組合法では、剰余金(利益)の配当は、組合員が組合の事業に従事した程度に応じて行うこととなっていて、これは出資に応じてではない点で画期的ではあるが、剰余金は上記のように資本額の大きさに依存してしまうのが資本主義の法則性であり、搾取された後の残りに過ぎないという認識が持たれるべきである。

(2021.11.22記)

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