(メモ)賃上げ原資を考えるためのいくつかのグラフ

法人企業は全体的に利益の内部留保を積み上げた結果、バランスシートの資本の部で利益剰余金が大きく増大した。この多くは設備投資などの投資に使われず金融資産としてバランスシートの資産側に積み上がった。
法人企業の収益力は1990年代に比較すると趨勢的には高くなっている。上場企業の多くは株主資本利益率を8%以上とすることを目標としている。
法人企業の従業員1人当たりで見ると、景気変動による影響はあるものの、平均的には150万円から250万円の経常利益が出ている。つまり、100万円程度の年収アップなら平均的企業は赤字に転落しないということ。
経済のマクロバランスからみると、日本は貿易収支がやや赤字にふれている状態。需要供給のミスマッチがあって潜在GDPに対する実際のGDPは低くとどまっているが、全体の消費水準は低くはない。賃金所得の増加がそのまま消費に結びついた場合には需要超過へと向かうこととなる。

マクロ的な貯蓄と投資の貨幣的なバランス
総貯蓄 - 総投資 = 経常余剰(海外への貯蓄)
これは恒等式であって、不況であろうと好況であろうと成立している。ただし、これでは経済主体を国民経済一つとみているので、これを資本の側、労働者、政府の3部門に分けて考察してみよう。貯蓄も投資も資本側(企業と資本家個人)、労働者、政府に分けてみる。資本側の貯蓄ー投資(固定投資及び在庫投資)を金あまり、労働者の金あまりも貯蓄ー労働者の固定投資(住宅など)、政府の貯蓄ー投資を財政黒字(マイナスにして財政赤字)とすると、
資本側の金あまり+労働者の金余り=海外への貯蓄(投資)+財政赤字+資本側の資金調達+労働者の借入

労働者の貯蓄は主に住宅購入などの投資に使わないで残ったプラス部分は金融機関への預金や年金基金となり貨幣資本として機能する一方、マイナス部分として住宅ローンなどの借入がある。また過剰貨幣資本は資本側において生じる「過剰」であり、資本側の外に対して貨幣資本としての機能が向かっていく部分と考えることができるので、資本側の金あまりから資本側の資金調達を差し引いて考えるべきであろう。つまり過剰貨幣資本=資本側の金あまり+労働者の金あまりー資本側の資金調達となる。そうすると以下のように書き直すことができる。

過剰貨幣資本=海外への貯蓄(投資)+財政赤字+労働者の借入

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