(メモ)格差拡大と相続税、所得税

資本主義経済のシステムのもとでは、税制において相続税や所得税の累進課税が適切に行われないと、少数の持てるもの=資本家階級と多数の持たざる者=労働者階級の間で、指数関数的な資産格差と所得格差が起きる。中間的な階級はごく少数を除いて持たざる者の方に転落していく。

では、相続税や所得税の累進課税の格差拡大抑止効果はどの程度なのだろうか?まず現行の制度で考えてみよう。

(現行の制度)死亡時に財産が100億円で相続人が一人である場合について仮定して計算する。控除は基礎3000万円、相続人あたり600万円であり、現行の税率で計算すると、54億4420万円の相続税を支払う結果、45億9480万円が相続人の手元に残る。

(相続税の速算表)

法定相続分に応ずる取得金額   税率    控除額
1,000万円以下          10%     -
3,000万円以下          15%    50万円
5,000万円以下          20%          200万円
1億円以下                                             30%          700万円
2億円以下                                            40%        1,700万円
3億円以下                                            45%        2,700万円
6億円以下                                           50%        4,200万円
6億円超                                                55%       7,200万円

事業投資や不動産賃貸、株式投資によって得る(税引前)収益率は平均して年5%以上あるとみてよいだろう。ここでは堅めに5%と仮定してみよう。1年目に得られる収益は2億2794万円である。所得税を支払うと1億7332万円が手元に残る。これを含めて再投資されるとすると30年後の資産総額は125億6014万円となる計算だ。

もちろん、現実には財産が多いほど投資機会に恵まれるし、リスクテークしないで預金や保守的な不動産投資にしていればこうはならない。事業に失敗する人も出るだろう。大きな相続財産を継いでも、その中でさらに財産が大きく増える層と、没落していく層に分かれるわけである。しかし、現行の税制(相続税率、所得税率)がどのように作用するのかという点で言えば、格差拡大を抑制するものではないということが言える。

例えば、上記の仮定で、10億円以上の相続財産に70%の税率を適用するとどうなるだろうか?相続税後の資産は32億8420万円であるが、同様の計算を行ってみると30年後の資産額は96億8388万円となる。つまり、この程度の相続税課税を行なってやっと資産格差の拡大を平均的には抑制できるということになる。

ちなみに日本維新の会が提案しているように相続税を廃止してしまうと、100億円相続した人の30年後の資産額は現行の累進所得税制のもとでも247億円5753万円に増える。格差大拡大政策であることは明らかだ。

所得格差の状況については
https://note.com/socialist/n/ndf16f4558aa2



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