(メモ)左派が伸長したアメリカ民主社会主義者2023年大会

2023年8月4日〜6日にアメリカ民主社会主義者(以下、DSA)の2年毎の大会がシカゴで開催された。2021年はオンラインでの開催だったので2019年以来、4年ぶりにシカゴで約1000人の代議員を集めた開催となった。
DSAは政党ではなく社会主義を標榜する活動家の集団であるが、2016年の大統領選挙におけるバーニー・サンダース支持の学生運動によって大きくメンバーを増やしたものの、この2年ではメンバー数が減少し、現在は72,000人となっている。こうした環境の中でどのように組織の立て直しを図るのかが問われた大会であった。
大会では全国政治委員会(NPC)が選出されるが、今回は16人(+YDSA2人)の枠に対して41人の立候補があり、左派とされる分派から立候補した人々が若干の多数を占めることとなった。分派に属さない委員が1人、右派とされるグラウンドワーク6人、社会主義多数派2人、左派とされるパンと薔薇派3人、レッドスター3人、マルクス主義団結グループ2人、反シオニストグループ1人という結果となった。DSAの路線問題として大きい課題は民主党との関係をどのようにしていくかであり、民主党との関係を重視する右派とDSAそのものの独立性を重視する左派の力関係で、今回は左派がわずかに優位に立ったようである。
大会で通過した決議のいくつかをみていこう。まず青年部的な存在であるYDSA(Young DSA)に対する予算20万ドルが、承認された。前回は同様の提案が反対多数で否決されていたので注目される変化である。YDSAの主力は学生や大学院生であるが、昨年以来、大学のために働いている学生や大学院生の労働組合への組織化とストライキによる闘いが広がっており、この中でYDSAは150%の組織拡大を果たしたという。2016年に学生だった世代から次に受け継いでいく動きになっている。これが多くの代議員にYDSA育成に関心を持たせた背景だろう。
また、財政問題に関連してメンバーに収入の1%を会費として収めるよう勧奨する決議が採択された。現在のDSA 会費は月15ドルを標準として、低所得者は低い額でもOKとし、また収入の1%を自己申告して納めるという方法も従来から用意されている。今回の決議は、その最後の選択肢=収入の1%納入を多くのメンバーに選択するよう勧めるというものである。これは、今回から全国政治委員会及び全国労働委員会の共同議長をフルタイムの専従として組織運動を強化するという決議とも結びついている。従来から個別課題への寄付の呼びかけも頻繁にあるが、DSAにとって財政的な強化は組織維持・拡大のために必要になっているようだ。
また、労働運動関係の決議において、Labor Notesという労働運動再生を目指すメディアとの協力関係を削除し、組合指導部との関係優先を拒否するという部分の削除を求めた右派グラウンドワークスからの修正案を否決し、従来の一般組合員重視の戦略を変えないという路線を明確にした。
選挙運動に関しては、DSAが独自のインフラを築くべきとする決議案が3/4の支持を得た一方、候補者の推薦について政党的な選択を行うべきとする修正案は5割にわずかに届かなった。
組織問題では、全国政治委員会の人数を現在の16人から51人に拡大するという提案は、62%の支持を得たが、規約改正に必要な2/3 には届かず実施されなかった。
大会では、本会議のほかに教員の代議員の交流会も行われたということで、産業ごとの横のつながりを志向する動きもあるようだ。


(ノート)アメリカ民主社会主義者(DSA)について

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