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マンチェスターシティ VS パリサンジェルマンが相変わらずハイクオリティな試合だった件

皆さんこんにちは、サッカーを見る人です。前回のレアルマドリー vs チェルシー、1st Legの記事に続いて二度目の投稿となります。


取り挙げるのは試合はこちら、一部では「オイルダービー」とも呼ばれているとかいないとか、マンチェスターシティ VS パリサンジェルマンより2nd Legの一戦です。




グアルディオラの選択


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こちらがスターティングラインナップです。注目すべき点はマンチェスターシティが偽サイドバック、所謂「カンセロロール」を採用せず4-4-2を選択してきた点でしょう。1st Legでも同様にカンセロロールを封印していました(ただし起用された左SBはカンセロです)が、サイドバックの攻撃参加を抑える事でパリサンジェルマンの強力FW陣を抑えようという発想ですかね。たぶんそうです。

目につくのはグアルディオラの2TOPの人選です。往年のマンチェスターユナイテッドに代表されるようなオーソドックスな4-4-2ではなく、2topにMFを起用するというゼロTOPシステムなんですね。

しかしながら皆さん、このフォーメーション、何処かで目にしたことがあるとは思いませんでしょうか? そうです。こんな辺境のNoteをご覧になってくださる熱心な読者の皆様ならもうお気づきだろうとは思いますが、このフォーメーションはFIFA19(Switch版)において、僕がCFレウスデポルティウ(スペイン2部リーグ)を使用する際に採用するゼロTOP型4-4-2にそっくりなんです。あの世界最強の名将グアルディオラも、とうとう僕のレベルまでたどり着いたか……





(ちなみにCFレウスデポルティウは、財政の問題により2020年をもって解散しているようです)




4-4-2 VS 4-3-3の攻防

このグアルディオラの選択が試合にどのような影響を与えたのか、フォーメーションの嚙み合わせから紐解いていこうと思います。


まずパリサンジェルマンは、4-4-2に対する4-3-3の数的優位によりポゼッションの確保に成功します。

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特徴的なのはネイマールとディ・マリアの両WGが内に絞りバイタルエリアを狙う、場合によっては中盤のボール回しに参加するポジショニングです。更にマンチェスターシティの2TOPに対してMFが一人DFラインに降りることによって、MF+2CBの3枚で数的優位を形成しました。

しかしパリサンジェルマンのビルドアップを見ていると、陽キャ達がいじめられっ子を複数で囲み奪った財布をパス回ししていく……とかいう漫画でよくあるワンシーンが思い浮かびますね。この例えがパリサンジェルマンに対して失礼だったことに今、気がつきました。


この陽キャ顔負けの数的優位形成術によりビルドアップを遂行していくパリサンジェルマンでしたが、ご存知の通りパリサンジェルマンの攻撃が得点に繋がることはありませんでした。裏への攻撃が少なかったことが要因の一つに挙げられるのではないでしょうか。

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おそらくパリサンジェルマンにおいて裏を狙う役割を担っているのはイカルディですが、イカルディにボールが渡るシーンは多くありませんでした。ネイマールやディ・マリアの裏抜けもありましたが、散発的でありシティの好守備にも阻まれ不発に終わりました。例えばムバッペを起用することができていれば、縦への速さが加わり強力な攻撃を展開できた可能性はあります。

また守備を重視した3センターの人選が攻撃におけるネイマールとディ・マリアへの依存度を引き上げた可能性も無視できないでしょう。特にパレデスとエレーラは攻撃より守備に特徴がある選手と言って良いのではないかと思います。ヴェラッティ含め、3ボランチとも呼べる守備的な布陣により安定した守備力を手に入れましたが、代償として攻撃力を失ったということでしょうか


もちろん、ポチェッティーノの選択が完全に間違いであったと決めつけることは出来ないと感じます。そもそもムバッペが怪我で起用できない厳しい条件であった点も無視できません。ネイマールとディ・マリアは二人で状況を打開できるタレントであり、二人の守備負担を減らすためにMFに守備力を求める選択肢も存在しうるでしょう(後述のプレッシング戦術に合わせたMFの起用でもあったはずです)。しかし、今回の試合に限って言えばポチェッティーノの采配がボールを握っての主体的な攻撃の可能性を奪ったと言えるかもしれないとは思います。




マンチェスターシティの狙い

一方、マンチェスターシティも攻撃において数的優位の形成を目論見ます。

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まず注目すべきは、パリサンジェルマンのプレッシングが4-3-3の3ラインで行われている点です。4-3-3のプレッシングを行っているチームにリバプールが挙げられますが、違いとしてリバプールはインサイドハーフが2枚とも前掛かりにプレッシングしますが、パリサンジェルマンは1枚が出て1枚は引くというシーンが多くバランスの取れたプレスになっています。

4-3-3プレスの長所はプレスの圧力の高さ、前線のタレントが高い位置で守備参加できる → 奪った後のカウンターの威力が上がる、という2点が大きいと思います。反対にデメリットはFW裏の広大なスペースをカバーするためにMFに大きな守備負担が課せられることでしょう。

リバプールは労基法に抵触しているのでは? という疑惑が出るほどのMFの運動量によりカバーしています。この試合におけるパリサンジェルマンのMFに課せられたミッションも同様のものでしょう。しかし、MFが3枚しかいないという構造上のデメリットは人力で補えるレベルを超えています。マンチェスターシティの4-4-2は、この構造上のデメリットを狙ったものとみて良いと思います。

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この試合では、まずパリサンジェルマンの3TOPに対して4バックで数的優位に立っています。さらにボランチでの数的優位を起点として攻撃を展開していました。

また、マンチェスターシティは前半途中からゼロTOPの流動性の高さを活かし前線4枚が流動的に流れながらサイドで三角形を形成することでポゼッションを安定させていました。

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この前線の流動性による三角形の形成は、ゼロTOPの4-4-2にしか出せない独自の強みとも言えると思います。具体的に説明すると、4-4-2は4-3-3に比べ三角形の形成をしづらいフォーメーションであるため、前線に流動性を与えることで弱点をカバーすることができるということです。

また、マンチェスターシティのゼロTOPの素晴らしい部分として裏への推進力が失われないという点が挙げられます。ゼロTOPシステムを採用するとトップ下の王様タイプの選手を多く起用することになるため引いて足元で受ける選手が多くなりすぎる欠点がありますが、マンチェスターシティはそうはなりませんでした。グアルディオラの指導の賜物なのか、選手個々のインテリジェンスの高さなのかは不明ですが、とにかく素晴らしいと思います。



『補足』

パリサンジェルマンやリバプールのような4-3-3のプレスに対しては、4-3-3より4-4-2のビルドアップの方が機能する可能性が高いでしょう。

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【 守備側のCFがアンカーへのパスコースを消すことができれば、攻撃側のアンカーを無力化できる → 攻撃側のMFが事実上1枚消える → 中盤の守備が容易になる。 】

フィルミーノのような守備の上手いFWであれば、アンカーへのパスコースを消すことも可能です。しかし4-4-2であれば、アンカーの位置に選手が二人(ボランチ)がいるため、どんなに守備の上手いFWでもパスコースを消すことは不可能になります。




試合の破壊者

ここまでの説明を読んでいただいた読者の中には「パリサンジェルマンの攻撃は機能せずマンチェスターシティの攻撃は機能して、マンチェスターシティが試合を支配して勝利したんだろうなぁ」という感想を持った方もおられるかもしれないですね。

事実、僕の文章力がクソ雑魚なのでそのような感想を持たれても仕方ないなとは思います。ただ、実際の試合においては前述のように両チームともビルドアップは安定してましたし、マンチェスターシティの攻撃もパリサンジェルマンの粘り強い守備が跳ね返してた点は明記しておきたいと思います。つまりビルドアップを巡る攻防からは決定打は生まれなかったということですね。

では決定打を与えたファクターは何だったのでしょうか

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こちらはマンチェスターシティの先制点のシーンです。

少し見えにくいですが、ボールを持っているのはGKのエデルソンです。ここから、左サイドに大きく張ったジンチェンコが裏のスペースへと飛び出し、そのジンチェンコへのエデルソンの超絶ロングパスが起点となってゴールが生まれました。

ピッチ上は10 VS 10なので、どうしてもGKは浮いてしまうんですよね。ハッキリ言ってGKからあの精度のボールを蹴られると、守る側からすればどうやって守ってよいかが分からないですww

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このGK、反則過ぎるww

また、パリサンジェルマンのFW陣を抑えるためにマンチェスターシティのSBは攻撃的になりすぎずバランスを重視していた感もありますが、ジンチェンコのここぞのタイミングでのオーバーラップは、さながら芸能人の不祥事をかぎつける週刊誌の記者が如き驚異的な嗅覚が成せる技ですね。見事だと思います。




後半になるとエレーラが若干高めの位置を取る修正をかけたようにも見えましたが、試合の大勢は変わらず。逆にセットプレーのこぼれ球からカウンターを見事に簡潔させたマンチェスターシティの追加点により勝負あり。更には気持ちを切らしてしまったディ・マリアのラフプレーから一発レッドによりパリサンジェルマンが10人となってしまい終戦となりました。


CLベスト8まで残るようなチームはプレスをいなして安定したビルドアップを行う術と実行する技術を持ち合わせていますし、守備側のブロックもそう簡単には破られない硬さを持っています。なのでショートカウンターの乱れ撃ちになったりガバガバ守備からの撃ち合いみたいな馬鹿試合になる可能性はかなり低いです。

そういった試合においてはプレスをいなして長い距離を運ぶか、ロングカウンターを完結させるか、いずれにしても長い距離を運ぶ攻撃を展開していけないと得点は難しいです。そして長い距離を運ぶには、やはりタレント力がどうしても必要になってくるんですね。

この試合でも試合を動かしたのはエデルソンという「個」です。奇しくも今年のCL決勝はオイルマネーの恩恵をうけ勝ち上がってきた2クラブ。ベスト4をみても、4チームとも金満で名を馳せるクラブでした。やはり試合を動かす「個」を揃えられる金は正義なのか……?



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(命は言い過ぎでは……?)




今回も閲覧していただきありがとうございました。CL決勝も頑張って分析してみたいと思います。

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