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サッカーにおいて監督のアピールは必要悪か?

「今のファールでしょ!!」
「押してるよ!!」
サッカーの試合で聞こえてくる監督・コーチからの
大声。
皆さんはどのように感じているでしょうか?

これまで多くの試合で幾度となく聞いてきたアピール
ですが正直審判員としてもサポーターとしても、
聞き触りのいい言葉ではありません。

ある監督さんがおっしゃったのは、選手の代わりに
アピールしているということでしたが、果たして
その言葉はチームにプラスに作用しているでしょうか?

そんな観点から私見を述べさせていただきたいと
思います。

監督のアピールの功罪について

このGWに担当させていただいた試合が対照的な試合
でした。
一方はU-18のクラブユース、もう一方はなでしこ
リーグです。

私の事前の印象はクラブユースは選手が個々に文句を
言ったり、監督も人によっては大声を上げる人がいる
印象で、なでしこリーグは比較的フェアな印象でした。

しかし実際に担当して驚いたのは全く逆だったから
です。正直その印象が作られたのが、何年も前の試合を
したときの印象だったため、いい意味で裏切られました。

クラブユースのチームは選手、ベンチともにフェアで
レフェリーに文句やアピールはほとんどありません
でした。
それどころか、プレーも激しいけどぎりぎりファウルに
ならないようなプレーが多く、審判としては見極めがい
のある試合でした。

一方なでしこリーグはというと、一つ一つのプレーに
対してアピールがあり、正直これをアピールするのか
と思わせるようなシーンも散見されました。

今までの経験上、ベンチのアピールが多いチームは
選手も同じように主審にアピールしてくることが多く、
試合に集中出来ていないと感じられました。

過去にあった試合では・・・


過去に経験した事例で言うと、ある高校の試合で
Aチームは選手、監督ともに事あるごとにアピールし、
対戦相手のBチームはほとんどアピールすることなく、
黙々と自分たちのプレーをしており、試合はBチームが
優位に進んでいました。

ある判定を巡ってAチームの監督から大声で異議を
唱えるようなシーンがありました。
ピッチ内の選手も同じように私に向かってアピールを
続けていたので、ベンチに行って監督へこう
告げました。

「このまま異議を続けられて退席されるか、判定は
審判団に任せていただくか選んでください。」

この対応が良かったかはさておき、これまでにそんな
ことを言われたことのない監督さんは、ベンチに戻り
判定へのアピールはなくなりました。

監督が注意を受けて何も言わなくなったAチームの
選手は、これ以上自分たちもアピールをすれば、
警告されると感じたのか、ベンチが言わなくなったから
なのか、私に対するアピールはなくなり、プレーに
集中するようになりました。

そうすると、そのAチームはもともと実力は上回って
いましたので後半に逆転勝ちする結果となりました。

選手たちはベンチ、監督を見ている

この事例からもわかるように、選手たちはベンチ
(アンダー年代では大人)がどのような態度を取って
いるかは常に見ています。
審判や相手チームに対して矢印が向いているチームは
自分たちのプレーを発揮することは難しいでしょう。
なぜなら、自分たちのプレーのミスも審判の判定の
せいにする傾向があるからです。

もちろん審判員が判定や判断を間違えることはサッカー
の中では起きることです。
勝ちたい気持ちが強くなり、それに対してアピール
したい気持ちは痛いほどわかります。
そういう時は審判もしくじったと思っていることが、
ありますが判定を戻れないときは毅然とした態度で通す
事もあります。

私もいろんな経験をさせていただく中で、間違えた判定
を選手に「さっきのはごめん」とか「角度が悪くて
見えなかった」と謝ることが出来るようになりました
が、経験が浅いうちは自分の判定には常に自信を持った
振る舞いをすべきと思いさも正しいという顔をしていた
時期もありました。

上位のチームほど判定への異議は少ない

これに関しては経験値のみでの意見ですが、大会で
上位の成績を収めるチームほど、アピールは少ない
ですし、審判員との付き合い方がうまいと思って
います。

その要因は様々だと思いますが、途中少し出てきた
矢印が関係していると思います。

なかなかうまくいかないチームは審判や相手チームへ
矢印が向いており、自分たちのプレーに集中が出来ず、
自分たちの課題を冷静に分析出来ていないのではないか
と思います。
一方矢印が自分たちに向いているチームは、判定に不満
があっても一言程度ですぐに切り替えて、どう自分たち
のプレーを修正するかを考えています。

少しの差ではありますが、この差は試合の中で非常に
大きな差となって表れてきます。

アピールが減ってきたことの功罪も・・・

最近では審判へのアピールをしないようにと、リーグ
からも徹底されているため、昔ほど審判へのアピールは
なくなりました。
正直大学リーグなんかでは、ほとんどアピールが
ありません。

そうやってクリーンなリーグになったことにより、
リーグの魅力も高まり、選手のインテンシティー
(強度)もあがってきたのは事実だと思います。

しかしながらここには良くない面もあります。
それは審判員が文句を言われないことで、自分が
正しいと勘違いしているということです。

10年近く前は文句を言われ続けることで、耐性が
できた一方これだけ言われるということは自分が
何か間違っていたのではという考えにもなります。
そのことによって、審判員の自己反省にもつながる
ことがありました。

文句が出るということは、何かしら不満があるから
出るのであって、その不満が真っ当なのか自分たちの
利益の為なのかを分析することで、審判員は自己分析に
つなげていた面もありました。

ですので、文句を言ってほしいとは言いませんが、
試合後に意見をもらうことは審判員として非常に重要な
事だと思います。
(実際に私の師匠は試合終了後負けたチームの監督に話
を聞きに行くように私に指導してくださいました。)

まとめ

とはいえプレーしている選手はもちろんのこと、審判、
ベンチ役員、スタッフ、サポーターすべての人で
サッカーを作り上げる中で、異議やアピールは見ていて
気持ちのいいものではありません。

そういった声が出ることは否定しませんが、もう少し
その功罪を理解したうえで使い分けることも必要なの
ではないかと感じたGWでした。

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