見出し画像

肺高血圧症のリハビリテーション

肺高血圧症を呈した患者様がいらっしゃいましたが、後輩が患者様に適したリハビリテーションを実施できていませんでした。先輩として手本を見せないといけないと思いまとめてみました。

 肺高血圧症とは

安静時に平均肺動脈圧が25㎜Hg以上を示すもの
(平均肺動脈圧は平均10~20㎜Hg)
またはPG(RV-RA):40mmHg以上(当院Drは25㎜Hg以上)

病態(色々原因あるのでIPAH)


① 肺細小動脈壁の肥厚⇒内腔狭窄

② 肺動脈圧↑

③ 右心負荷・右心不全

④ 肺への血流↓

⑤ 酸素摂取量低下し運動耐容能低下

肺高血圧症

図1 肺高血圧症の運動時の呼吸・循環応答¹⁾


 症状


自覚症状:労作性呼吸困難 易疲労性 失神
右心不全の症状:頸静脈怒張 肝腫大 腹水 下腿浮腫
低酸素血症:チアノーゼ ばち指

原因

色々あります。
ダナポイント分類
第1群:PAH
第2群:左心性心疾患に伴う肺高血圧症
第3群:肺疾患および/低酸素血症に伴う肺高血圧症
第4群:慢性血栓塞栓性肺高血圧症
第5群:原因不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症
出典:肺高血圧症治療ガイドライン(2017年改訂版)


 特発性肺動脈性肺高血圧症の治療


〇肺血管拡張療法:経口血管拡張剤 プロスタサイクリン持続静注療法
〇抗凝固療法
〇必要に応じてHOTや右心不全に対する治療(利尿薬や強心薬)
〇内科的治療が困難な場合 肺移植を検討

 予後


未治療IPAH/HPAHの5年生存率は、肺血管拡張療法導入前は40%と不良であったが、肺血管拡張療法が保険適用になった2005年以降は改善しており、治療可能例の5年生存率は70~80%まで改善している。死亡例は、突然死ないしは右心不全死が多い。
出典:難病情報センター 特定疾患医療受給者証交付件数 平成26年度 肺動脈性肺高血圧症患者数  http://www.nanbyou.or.jp/entry/1356

 理学療法アプローチ


〇肺高血圧症患者に対して呼吸訓練や低負荷の筋力トレーニング、自転車エルゴメータ(インターバルトレーニング)、ウォーキング、栄養指導、心理的サポートなどの包括的リハビリテーションを15週実施したところ、最大酸素摂取量やAT、換気当量、6分間歩行距離、息切れの自覚症状、QOLスコアは有意に改善¹⁾。
〇15週後の平均肺動脈圧は低下傾向、心係数に変化はなし。肺動脈リモデリングの影響なく、骨格筋の機能改善が考えられた¹⁾。
〇運動により血圧、心拍数は平均25%上昇したが、平均肺動脈圧は平均64%と顕著に上昇¹⁾。肺循環系の予備能力低下があるため運動療法を実施する際、循環動態の変化を注意深く観察することが大切。

肺高血圧症のリハビリテーション中止基準

表2:肺高血圧症のリハビリテーション中止基準¹⁾


最近の研究ではランダム化比較試験などエビデンスが徐々に確立しているがまだ不十分であります。その中で呼吸リハビリも行うことが重要であること、循環動態をみつつ右心不全症状を確認してリハビリテーションを行ってまいります。



【参考・引用文献】
1)西崎真里,小川愛子,松原広己,他:心臓リハビリテーションの最新の動向 肺高血圧症患者に対する心臓リハビリテーション心臓 44(3):274-278,2012


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?