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短歌 出産〜子育て中
焼きたてのシフォンケーキの香りして
はじめての乳吸いつくわが子
別々のからだになって
はじめての音が名として君を呼ぶ
眠る瞬間(とき)かすかに上がる体温と
くったり重くなりゆくからだ
母という無数の生の一粒に
ただなればよいという安寧
おかえりと鼻をくすぐる安心を
つくる人こそ親といふらし
みどりごの頭を撫でる
手のひらの全面積を愛にしながら
ベビーカー連れて見にゆく
惑星と地球の影
短歌 2021.6.10
おめでとうわたし、
再び日常が輝きを増すそのための日々
あと五分の過ごし方さえわからずに
アンモナイトの炎を見てる
誰も見ていないと知りつつ
病室で一人ルージュを乗せる唇
悲しみは小さく分けて背負えたらいい
なるべく多くの人にひとしく
午後十時メロン色したオーロラに
取り囲まれて病を眠る
短歌 2021.6.1
ぺらぺらのからだを揺すりワカメワカメと
笑ってみせた或る日の少女
哀れぶるにはちと大人になりすぎた
ベッドの柵に洗濯を干す
肯定も否定もされない一日の
輪郭が溶けやがて水彩
光ったら押してください
白昼の星を数えるお仕事です
母の弾くピアノの音でゆっくりと
空気の粒が呼吸をはじめる
短歌 2021.5.30
入院日誌とはいいつつ、あんまり具体的に書くのも感傷的に書くのも違う気がして、短歌を詠むことにした。細々と、とくに意識することもなく続けられている趣味かもしれない。
ふとした瞬間に、ぽこぽこっと浮かぶ感覚を言葉にしています。
・・・・・
西日さす病室で聞くおじさまの
透析と海を渡る生活
空っぽのわたしのなかに流れ込む
人の想いが毒で薬で
点滴とインターネットと充電器
線につながれ生かされて