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散文

寝坊した。旅行でくずれたリズムをうまく戻せないでいる。というのは言い訳でただただ、自分の自制心がないだけなのだが。

時間はちょうどお昼時。飯を簡単に済ませるために湯を沸かす。どん兵衛は母親に食べられたので、もう一つのよくわからないラーメンを食べる。

お湯を注ぐと後は待つだけ。寝起きの思考はなぜか文章について考えていた。僕は最近つまらない文章を書いている。なんだか心地の悪さを感じる。

ぼやっとしていると、食べどきのラーメンができた。本当に食べどきかはわからない。ここ数年は蓋を開けるのが早い。昔よりなんだかせっかちになったような気もするし、単に気にしなくなっただけかもしれない。それか単に固麺派になっただけかも。いずれにせよ僕はもう10年くらい、カップメンの時間を正確に測った記憶がない。なんとなくでやっている。別に問題はない。

ラーメンをずるずると啜っていると、うちの猫(おたた)がみゃあみゃあと鳴く。そういえば、昨日、夜のコンビニにいた子猫は今どうしているのかな、と思いをよぎらせる。昨日の夜は、その猫をうちで飼ったとしたらどんな名前にするかを妄想しながら夜道をあるいて、一人でニタついていた。変態である。

ミャアミャアミャアミャアとおたた。外に出せというのだ。外は暑いぞ、おたたよ。と思いつつも、このモードになると止まらない。いつも夕方に外に出すのだが、どうにも収まりそうにないので少しだけ外に出すことにした。案の定あつい。

日に照られながら文章のことを考える。最近、書く文章がつまらないと感じる。執筆行為がつまらないのではなく、書いて出すものがつまらない。そりゃ自分の興味がある話題で書くのだから、自分はいいよ。だけど、読み物としてはどうなんだろうねという思いが最近ふつふつと芽生えてきた。前からぼんやりと考えていたことではあるのだけれどね。
手を止めるつもりはないし、まあそれでもいいかと思ってやってきたのだけど、なんだか違和感を拭えずにいるのはなんでだろう。

最近、フランシス・ベーコンのこんな言葉をみた。「書くことは細密な人間を作る」。これは、ここ数ヶ月、毎日のように執筆をしている僕の実感と合っているので間違いないと思う。僕もそういう考えで、今まで執筆してきた。書くことは考えることなんだ。執筆で人は細密になる。なにに細密になるかは、本人次第なのだが。

ずっと自分のことを考えて執筆してきた。自分のために執筆してきた。そしてそれは、間違いなく自分のためになったと思う。僕が今日、今の僕であるのは執筆という行為を通じて思考してきたからだ。歴は長くないものの、その実感は確かなものとしてある。おそらく、執筆をしていなかったら、今ここにいる僕はまったく別の僕だ。それは今のぼくよりも稚拙だろう。だから、僕は僕のために執筆してきたことに対して後悔はない。有意義な時間だったと言える。

だけれど、やはりどこかで空虚さを感じる。その理由は明白で、文体を無視しているからだ。つまるところ、読み物としての面白さや、文章から人間味を出すことを無視している。たまに、センチメンタルな気分になって、そういう文章を書いてしまうときもあるのだが。

僕はビジネスチックな文章が苦手といいつつ、そういうわかりやすい文章をかいている自分に嫌気がさしているのだ。もっと、温度があって、色があって、文化的で、詩的な文章が書きたい。そうすれば誇れる。

そして、欲張りな僕は両立したい。細密になることと両立したい。自己の人間的な成長を願いながら、なおも文学的な文章を書くことを望んでいるので傲慢だ。傲慢なのかな。わからない。けど、難易度があがるのは間違いない。それでも、これは僕が戦うべき課題なのだと思う。

そんなことを考えていると、ふと日差しの暑さに現実に戻る。背の低い石壁の壁に入ろうとしゃがむとおたたと目が合う。日に照らされて綺麗な黄色い目。かわいい。

かわいい、、が、あつい。ので、帰る。猫より先に人間の限界が来た。おたたは絶対に物足りないけれど、暑さには勝てません。ごめんね。

ごめんね、ごめんね、といいながらおたたを抱える。周りを見渡すおたた。案の定まだ散歩させろと言ってくるが、また夕方ねと家に入れる。

うん。文体を優先しよう。哲学は、まあ二番目かな。文章作品として、まずは自分がいい感じって思えることを優先しよう。

毎日、そんな有意義な気づきがあればいいが、そんなことはない。明日からは僕は文学をやる。といっても特に方向性に変わりがあるとは思わない。心持ちの問題。

エッセイを、essayと記してみる。うん、なんかいいじゃん。オサレっぽくない?なんだか少しワクワクしてきた。明日からは僕も作家になれるかな。ワクワクするのは、きっと心の奥底でそれを望んでいたからだろう。ごめんね、素直な僕よ。

今日は少しだけ「つまる文章」が書けた。つまらない文章と隔絶できればいいが、まあそんな簡単な問題でもないだろう。気長にやるよ。


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