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耳かき

僕はいつも、いかにしてでかい耳くそをとるかと考えている。なにか忙しいことがあって、しばらく耳かきをしていなかったと気づくと興奮する。遠距離恋愛中の恋人かのように、離れている時間が長くなるほど再開するときの喜びは嬉しいものだ。そして、その想いや期待は形となって現れる。物理的に。

僕はどうも耳かきが好きらしい。家のあちこちに耳かきが落ちている。今現在も、カタカタと打っているキーボードの横に一本。座っている椅子の斜め後ろに一本、耳かきがある。別の部屋にも2本ある。耳かきはギターのピックと同じで蜃気楼のようにいなくなるヤンチャな性質をもつので、多めに持っている。
子供の頃は、弟や妹の耳掃除をよくしていた。自分の耳でなくてもいいのだ。50回くらい生まれ変わったら、耳そうじクリニックの人になりたい。

とにかく、物心ついたころからでかい耳くそを追い求めていた。綿棒ではダメだ。綿棒だとエッジが足りない。コナフキ耳くそや、しみしみ耳くそなどをとるときに綿棒が必要な場面もあるが、やはり平常時は耳かきのほうが断然いい。

ふと思ったが、耳かきをするときの道具に「耳かき」という名前がついているのは不思議だ。サッカーをするときに、ボールのことをサッカーと読んでいるようなものじゃないか。似たようなものに草刈機があるが、あれを「くさかり」とは呼ばない。「機」をつけることで行為と道具の差別化を図っている。この理屈でいうと、耳かきにつかうあの枝は「耳かき棒」という名前をつけてもよさそうだ。だけど現実は耳かきと呼ばれている。不思議。そういえば、肩たたきも、肩たたきだ。毛抜きも、毛抜き。体に関わる行為は、その行為の名前がそのまま道具の名前になるのかもね。ちょっと発見かも。

えと、話がそれた。僕は普段、耳くそに頻繁に会いにいくので、なかなかでかいブツは取れない。そうやってフラストレーションが溜まっているときは、他人の動画を見たりもする。

世界は広い。さすがにあんなに化け物じみた耳垢なとれない。うらやましい。
耳の中をシンプルに撮影した動画もいいが、あえて、引きで撮って、耳全体が写っている動画もなかなかいい。耳の中をアップで撮ると、どうも大きさの感覚が狂うけど、引きだと普段の感覚をもって大きさがわかるので、よりヤバさが伝わる。

たまにネットで、でかいブツの取り方を調べたりもするが、大抵は「耳垢は自然と排出されるので、月に1、2回程度の耳そうじに留めましょう♪」という、文字通り耳障りのいいおりこうさんな情報ばかりが並べられている。うるさいだまれ。もっと非合法の情報をおくれよ。俺はでかいブツをとりたいんだ。

そんな中でもたまにいい情報を見つけたりする。

まず、風呂上がりの耳かきはやはり効果絶大だ。湿度でいい感じに耳の中が湿っており、よい出会いがあったりする。耳垢からすれば、ウォータースライダーみたいなものだろうか。するっと滑っておんぎゃあする。

あとは、逆の手で耳かきするというテクニックも意外と使える。普段の手だと角度的になかなか力が加えにくい箇所に自然と力を掛けられるので、思わぬ収穫があったりする。

他にも色々とあるんだけど、さすがに熱弁するとさすがにキモいというか、すでにきもい。なぜ僕は朝から耳かきについて文章を書いているのかよくわからない。

最後に僕の夢を書いて締めくくろうと思う。いつか、カメラ付きの耳かきがほしい。不思議と、自分で買おうとは思わない。ので、誰かプレゼントしてください。


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