マガジンのカバー画像

タンブルウィード

31
ーあらすじー これは道草の物語。露木陽菜(ツユキヒナ)は地元山形を離れ、仙台に引っ越してきて三年目。自宅とアルバイト先を行き来するだけの淡々とした日々を過ごしていた。ある日、誤…
運営しているクリエイター

2021年2月の記事一覧

22

しん、と静まった月の無い夜。雪は降り続いていた。 東北大学の校舎の窓には、点字みたいにぽつぽつと疎らに灯りが点っている。 長い旅を終えた人間が古巣に戻るときに見る家の灯りには、必ずいつでも迎え入れてくれるような穏やかな温もりが窓の明かりからなんとなく感じられるが、大学の窓達にはそうした温もりの様なものは感じられず、きっとその明かりの点いた部屋の中では何かしらのやらなければならないことに追われている講師や学生が居るからなのだろう。 顔に吹き付ける冷気と澄んだ闇のせいだろうか、じ